クリスマスというと、雪の中をトナカイが引くソリに乗った赤い帽子に赤い服で髭を生やしたおじいさんのサンタクロースを連想するだろう。
クリスマスツリーと靴下に入ったプレゼントなど面白い風景を描く子供たちも多い。サンタクロース(Santa Claus)とは、クリスマスの前夜に良い子のもとへプレゼントを持って訪れるとされている伝説の人物である。
クリスマス・イヴの話は英国の文豪のチャールズ・ディケンズの小説『クリスマス・キャロル』(1843年)によって世界的に有名になった。守銭奴のスクルージーがクリスマス・イヴに超自然的な体験をし、改心するというストーリーである。
その伝説に基づいて、もっと面白く民俗祭り風にと文化商品化したのはフィンランドである。フィンランドは1880年代に伝統的な冬の祭りに若者達がお面を被って家々を回ることと、サンタクロースの伝説を結びつけてクリスマスの前夜祭イヴの文化商品を作ったのである。1920年代、フィンランドの国営放送局は伝説と伝統祭りを生かしてラップランドにサンタクロースの住居があると宣伝して、サンタクロースの国というイメージ作りに成功した。そしてアメリカから多くの人が訪ねるようになった。その祭り風のサンタクロースが世界化されたものの一つが、今の日本にみられるものである。
1960年代にスウェーデンに移民した友人の崔炳殷氏は、フィンランドがスウェーデンのものを先取りし、サンタクロース商品として世界一になったことに対し、不満であるとよく話していた。
彼に言わせるとサンタクロースの原型はフィンランドではなく、スカンジナビア半島北部のラップランドのラップ族にあり、それは実にスウェーデンに属しているという。
彼は2年前に亡くなったが、生前、ラップランドのサーミ族が韓国から養子を迎える内容の「白い鹿」という小説を書いた。韓国からの養子を題材に、ハンラ山の 白鹿とサーミ族の鹿とつなげ、スウェーデンと韓国との関係をつなげようという夢を持って、韓国語で小説を書いたものだ。私は友人としてその本の後書きを書いたことがある。
日本ではクリスマスの本質的な意味であるキリスト教の意味は意識されず、全く商魂によるイルミネーション、クリスマスツリーの点灯、贈り物ばかり流行している。
日本にはキリスト教の宗教や信仰とは関係ないキリスト教の表面現象として受け入れられているといえる。それは一般民衆の現象とは言っても、キリスト教側も12月25日のイエスキリストの生誕の日に記念礼拝のクリスマス礼拝はせず、便宜上日曜日に繰り上げて行っているところもあり、日本の教会の一部が世俗化してしまったのである。
チェ・ギルソン 1940年韓国・京畿道楊州生まれ。ソウル大学校卒、筑波大学文学博士(社会人類学)。陸軍士官学校教官、広島大学教授を経て現在は東亜大学・東アジア文化研究所所長、広島大学名誉教授。