7月18日、『アジア子どもの本紀行』(めこん)を出版したばかりの児童文学者、山花郁子さんを囲んでお話を聞く会をもった。この会を主催したのは、調布市を拠点に活動している「異文化を愉しむ会」で、今年13年目を迎える。山花さんは長い間、「赤ちゃんからお年寄りまで」を対象に歌と語りでブックトーク活動を続けていてファンも多い。
82歳とはとても思えないほどよく響く美しいお声で、孫娘の新菜さんと2人で訪れたカンボジア・ベトナムでの体験談は新鮮で興味深かった。カンボジアではアンコールワットの塔の上に昇る朝日が、紫やピンク、水色やグレイに彩る「サンライズ・アンコール」に歓声をあげ、ベトナムでは伝統芸能を堪能し、日本のすげがさに似たノンを被ってのメコン川クルーズやシクロ(三輪自転車タクシー)に乗って裏道を巡ったことなど。旅先で出会った人々の話は、私の異国への旅心をそそった。
しかし楽しい旅の一方、べトナム戦争当時、枯葉剤によって下半身がつながった双子のべトちゃんドクちゃんに想いを馳せ、枯葉剤被害者を支援する店でサンダルやコースターを求めながら、不自由な手で布地に刺繍する姿を見て胸が痛んだという。お話を聞きながら、『地雷でなく花をください』(自由国民社)を英訳された相馬雪香先生のことが思い出され、出会いの妙を感じた。「難民を助ける会」で陣頭指揮をとっていらした相馬雪香先生は、当時日韓女性親善協会の会長の重責を担われていた。
私が主宰していた『鳳仙花』にも時折お願いして文も寄せていただき、「韓国を知るには『鳳仙花』を読みなさい」と事あるごとに友人知人に購読を勧めてくださっていたのだが、そのお一人が山花さんだった。奇しくもこの会で、『地雷でなく花をください』を山花さんから聞くことになろうとは!出会いは偶然のようで必然的なものかもしれない。
後半のお話は、旅の想い出話につづき持参の絵本を見せながらの歌と語りへと移っていった。美しい絵本で目を楽しませ、耳から入ってくる快いことばが想像力をかきたてる。最後に韓国語と日本語で子守唄(チャジャンガ)の読み比べとなった。韓国で最も知られている「チャジャンガ」を韓国から来られたばかりのイ・スギョンさんの先唱でみんなが声を合わせた。遠い昔の懐かしい記憶がほんわかと浮んできて、まるでゆりかごの中で童心にかえっていくようだった。
今回も多くの新しい出会いが生まれた。このように日・韓の出会いが増えれば、「異文化を愉しむ会」の願い通り、互いの文化や生活習慣の異なりを理解し合い、愉しみながら、信頼しあえる隣人として、互いに手を携えていく力が湧いてくると確信する。
オ・ムンジャ 在日2世。同人誌「鳳仙花」創刊(1991年~2005年まで代表)。現在在日女性文学誌「地に舟をこげ」編集委員。著書に「パンソリに思い秘めるとき」(学生社)など。