先日東亜大学東アジア文化研究所と山口日韓親善協会連合会の共催で「楽しい韓国文化論」(全7回と韓国旅行)の初回の公開講座が東亜大学で行われた。広く宣伝しなくとも60人ほど集まった。
司会は下関市議員9期ベテランの友松弘幸山口日韓親善協会副会長、東亜大学櫛田宏治学長と山口日韓親善協会会長の石崎よしすけ氏の挨拶から始まった。特に石崎氏は自民党山口県連の会長を長く務めた政治家として「今日の日韓関係を悪くしたのは政治家だ」という言葉には感動した。
私は講師の堀まどか氏を紹介した。彼女は植民地に日本村を作った木村忠太郎の曾孫に当たる。彼女はロンドン大学に留学し、京都の国際日本文化研究センターで『二重国籍者野口米次郎』の研究で博士号を取得、サントリー文芸賞も取得された。今年3月から韓国嶺南大学校で日本語と文化を教えている。私は彼女が韓国に赴任していく時、韓国研究、それも植民地研究を薦めたが表情はいまひとつであった。それからしばらく経ち、今度の講演で何を語るか注目した。
彼女は韓国でカイコの蛹を食べる、缶詰も売られている話から、日本ではイナゴを食べること、未来食として昆虫を食べるところから文化相対主義へ、韓国を見て日本が見えてくる話になっていく。私は世界的に知られているマービンハリスの説、昆虫は獲り難いということを思っている内に話は森崎和江氏の『慶州は母の呼び声が原郷』から植民地育ちのアイデンティティーの問題、そして植民地と彼女の祖母の話と、どんどん重く展開していった。彼女は小学生時代に植民地朝鮮で生まれ育った祖母に連れられて韓国巨文島へ旅行したことがある。
その彼女が成長しながら韓国を懐かしがっている祖母とは対立していくようになったことを語った。それはまた父親と祖母との対立点であり、家庭内で世代間の葛藤があったと披露した。つまり彼女は祖母に「植民地にしたことがなぜよいのか、懐かしいのか」と反発し、彼女の父親も同様、韓国と距離を持ちたがっていたということである。
私は驚いた。私は祖母の堀麗子氏のようにその家族も当然「親韓派」だと思い込んでいたのではないか、また私自身が植民地を研究する内に植民地主義者になっているのではないかという反省の一瞬であった。それがまさに家族の中でも世代ギャップが浮き彫りにされた貴重な講演であった。彼女の講演に父親である広島市立大学の教授の堀研画伯が賛同のコメントをした。
彼女は植民地史から離れて客観的な韓国、異文化として「そのままの韓国」に関心を持っている。韓国は明治以降日本の影響圏内で発展してきたのは事実である。その韓国が今、直接米欧文化へ接近し日本より先進国化へ、地域的に中国寄りへ方向転回しようとしている。これが韓国の本当の解放と独立であろう。
チェ・ギルソン 1940年韓国・京畿道楊州生まれ。ソウル大学校卒、筑波大学文学博士(社会人類学)。陸軍士官学校教官、広島大学教授を経て現在は東亜大学・東アジア文化研究所所長、広島大学名誉教授。