アベノミクス第三の矢が放たれた。官邸主導の国家戦略諮問会議が開かれ、六地域の国家戦略特区が決定。「創業のための雇用改革拠点」と福岡市も特区指定された。
これを受けて、高島宗一郎福岡市長は起業促進、企業誘致で雇用の拡大を唱え、10年スパンで50万人の雇用創出を目標に「日本一起業しやすい街を作る」と意志表明、庁内に事業推進本部を設置した。そして4月2日の第一回会議で事業推進の要、特区部長の公募を決めた。
「民間のプレーヤーと一緒に、時代にそぐわない制度を見直す改革を国に提案するとともに、福岡を舞台に、新しい価値を生み出し、世界に発信する」と高島市長は公募理由を説明しながら、民間人の活力に寄せる期待を語った。アベノミクス第三の矢は賛否両論ある、政府内にも不協和音がある成長戦略だが、福岡市の取り組みは半端ではない。特区部長の公募がそれを如実に現している。
メニューを国が福岡市に示した。①創業後五年以内のベンチャー企業等に対する雇用条件の明確化②多様な外国人受入れの在留資格の見直し③外国人向け医療の提供④街中の賑い創出、である。
福岡市は若者が多い街で留学生も多い。在日外国人の居住割合も高く、ベンチャーや外資系企業が進出しやすい地域である。その特性で特区指定されている。外国人の住み易い環境つくりが、福岡市に対する国の期待になった。
国のメニューに加え、市は出入国や通関の特例措置などを検討し、国にその試案を積極的に提案する方針でいる。福岡市の成長戦略は国際化戦略に等しい。成長戦略を妨げる人口の減少による労働力不足はいまや深刻な問題。もはや外国人労働者の流入を避けることはできない。
経済活性化は国際化が不可欠、排外主義が介入する余地はない。成長戦略は内需を刺激するだけでは不足。外需に対する戦略もいる。
消費税増税で景気の下落が懸念される現在、国際競争力の強化は必至の状況だ。企業の外国人雇用は年々増加、日本的な就労慣習に問題が生じ、雇用条件の見直しが必要になっている。特区指定された福岡市の「やる気」は頼もしい。
外国人雇用環境の改善・整備は、在日コリアンの公共意識にもいい影響を与え、就業定着率を向上させる。定住在日コリアンは、その特性が生かされ、労使関係を円滑にする存在になる。
在日コリアンの存在価値が高まる、外国人が暮らしやすい共生社会は大歓迎だ。市の特区部長公募に国籍条項はない。公募に挑む在日コリアンの出現を期待している。
アベノミクス第三の矢の成否は国際化にかかる。そして国際化の成否が、日本国の繁栄・衰退につながる。人口150万人、アジアの玄関を目指す、九州随一の成長都市「福岡市」に託す国の期待は大きい。
パク・ソンヨン 1947年、福岡県北九州市生まれ。在日2世。拓殖大学卒業。2000年、韓国食品普及処「㈱海龍」創業。現在、海龍相談役。著書「親韓親日派宣言(亜紀書房)」。