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2014/08/15

<随筆>◇「光復節」と「敗戦記念日」◇ 海龍 朴 仙容 相談役

 在日2世の私は8月15日を終戦記念日と習った。中学生時代、終戦記念日が祭日でないことに疑問を持ったが、夏休みやお盆の最中だ、祭日になったとしても休日は増えない。だから深くは考えなかった。

 その後、40代の10年間、ソウルで生活したことがある。そこでは様子が違った。韓国では旧盆は盛大だが、新暦のお盆は平時と変わらない。従って8・15は「光複節」、大きな祝日だ。国民は我が家の門に国旗(太極旗)を掲げて、日帝の植民地支配から解放されたこの日を盛大に祝う。私にとって8・15は終戦日。それを口にすると「敗戦日だ!」と本国人が強面で訂正してきた。拙い母国語を使い、日本語を流暢に操る私は完全に日本人扱いされていた。

 そんなことがあって、私の認識は変化、終戦日が敗戦日となった。どっちでも一緒だと思われるが、それがそうじゃない。敗戦日と言われても私は傷つかないが、普通の日本人は悔しいことだろう。日本人は終戦日を祝う気はない。敗戦による終戦、それが屈辱的なのだろう。8・15を敗戦日とは言わない。

 だから敗戦を知らない子達がいる。中には戦争があったことを知らない子もいる。そんな子の存在には驚く。本題じゃないのでここでは触れないが、先の戦争の経緯を全く知らない子達の存在は見過ごせない。歴史教育を重要視し、近現代史をちゃんと教える必要がある。紛争の発端や戦争に繋がるその後の推移を学ばずに、原爆被弾など、国土を蹂躙されたことだけを学ぶと、被害者意識が過剰になる。先の戦争の加害面の話を受付けず、歴史認識が偏ることになる。

 韓日の諍いが続き、和解の兆しはないが、韓国は日本に敵対していない。両者の歴史認識の隔たりが大きく、韓国人はそれをただす言動や不満を声高にするが、それを反日行動だと短絡的にとらえるべきではない。韓国にとって日本は大切な国である。韓国人の多くはそれをよく知っている。それ故に日本に対する期待は大きい。

 実は日本も同様、嫌韓派よりも親韓派の方がはるかに多いが、少数である嫌韓派の声が大きく、日本人の多数が韓国嫌いだと感じさせている。在日2世の我々は両国の真ん中に近い立場にいるので、そのことがよくわかる。両国で生じる摩擦の理由も分かるが、残念ながら、それを解決する手立てはない。

 日本で韓国を擁護する在日は「韓国ボケだ!」と嘲笑され、韓国では日本の立場を弁解するので「親日派!」と罵倒される。在日2世はいつも両国人の裏切り者となる。韓日の真ん中に立つ辛い立場は理解されない。それで私は「親韓・親日派」を名乗るようになった。両国には揉め事の好きな人が多く、私の声に耳を傾けてくれる人は少ない。


  パク・ソンヨン 1947年、福岡県北九州市生まれ。在日2世。拓殖大学卒業。2000年、韓国食品普及処「㈱海龍」創業。現在、海龍相談役。著書「親韓親日派宣言(亜紀書房)」。