夏の蒸し暑い夜、陰気な森にはおばけのトケビが火の玉として出没する。トケビは韓国人であればとても親しみのあるお化けだ。村の中か森の中や山、または、人里離れた一軒家など、人々の生活空間からあまり遠く離れていない所で現れる。形体は大部分が火の玉、青い灯りだと言われる。火の玉は一つが二つなって二つが一つになって、いくつかに分離したり合わさったりして神秘的に変化する。
幼い頃、蛍が舞う夜には外出を控えたことを思い出す。使い減った箒や農具に血が付くと夜に化けてトケビになるとも言われており、脚が一つしかないので独脚鬼とも呼ばれる。トケビに関する昔話や出会った体験談(?)も多い。昔、私の叔父は深夜お墓で一晩中相撲で戦ったが、疲れて寝て朝になって見ると石碑だったと語ってくれた。私の恩師の一人はお化けなどを信じなかったが、トケビがよく出没すると言われる所を、ある夏の夜峠に向かって坂道を歩いていた時、突然棒のような化けものが現れて動くので気を失うほど怖かったと話していた。
体形は人の姿と似ているが、一つの角があるなど変わった点もある。つまり人に似て異なる存在である。一般的にはトケビは男性であり、未婚の若者として現れている。
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