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2017/01/13

<随筆>◇『対馬物語』◇ 呉 文子さん

 昨年の11月27日、早稲田大学大隈記念講堂で、対馬市民劇団の「漁火」によるミュージカル『対馬物語』が上演された。このミュージカルは、豊臣秀吉による朝鮮出兵から、天下分け目の関ヶ原の合戦で西軍に加わって敗北後、家康の命により国書を偽造して朝鮮との国交回復のために奔走、「朝鮮通信使」の来訪実現までの激動の時代を生きた対馬藩主宗義智(そうよしとし)の物語。国境の島・対馬は山が多く平野が少ないため稲作がふるわず、対馬にとって朝鮮との交易は藩存亡の生命線ともなっていた。にもかかわらず豊臣秀吉の命により心ならずも朝鮮出兵することになる。

 二つの国のはざまで苦悩する対馬の苦難の歴史を背景に、キリシタン大名小西行長の娘マリアとの夫婦愛と受難の生涯を軸に描いたドラマチックで壮大な歴史ミュージカル。脚本はジェームス三木。愛しあいながらも運命に引き裂かれ、静かにマリアが去っていくシーンでは戦国時代の女性の哀しいさだめにすすり泣く声も聞こえた。フィナーレでは、「朝鮮通信使」の来訪を祝い、コーラスをバックに和太鼓が響き渡り日本舞踊や韓国舞踊が舞台を華やかに彩っていた。


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