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2017/04/21

<随筆>◇祖国との出会い◇ 海龍 朴 仙容 相談役

身震いし、熱い血が胸を焦がす
涙が溢れて止まらない
懐かしき思いが湧き
見知らぬ祖国を前に
不思議な感動が体を駆け巡った

 50年程前、韓日国交正常化直後、無謀な韓国一人旅をした。祖国とはいえ、外国に等しい国である。身構える覚悟もなく、韓国知識がないまま出発した。小倉埠頭(北九州)から「アリラン号」に乗船、日本をゆっくりゆっくり離れた。見送りに来ていたオモニ(母)に振る、別れの腕も、最初は元気がよかったが、オモニの姿が小さくなるにつれ、小振りとなり、元気がなくなった。オモニの姿が見えなくなると、急激に見知らぬ国に行く不安が、どっと押し寄せてきた。「アリラン号」は客船とは名ばかり、船内の様相は古ぼけた貨物船、汚くて異臭を放っていた。私も一つの貨物のように扱われ、船底に閉じ込められた。


つづきは本紙へ