その日もエレベーターのドアが開くと、車椅子に乗った母が目の前にいた。「遅いねぇ」。開口一番、拗ねたようなひと言に、朝からどれほど待ちわびていたのか、母の孤独がひたひたと伝わってくる。すっかり小さくなってしまった母の肩にそっと手を添えながら、ごめんなさい、と心で詫びていた。
母が米寿(88歳)を迎える半年ほど前のこと、介護施設入所までの1年半、母を我が家に迎えて一緒に暮らした。一人暮らしをしていた母が、娘との生活に過大な夢と期待をもつのは当然だろう。母の期待に応えようとかなり頑張った。
つづきは本紙へ