朝日新聞(8月22日)に「生涯をかけて問うた共生の精神」の見出しのもと、アイヌ文化伝道者宇梶静江(87歳)さんが紹介されていた。太い大樹の根元に寄り添ってアイヌ模様が施されたマタンプシ(鉢巻き)やタマサイ(首飾り)を付け、古布絵作家でもあるご自身が刺繍した民族衣装を身に着けて微笑んでいる写真。「後藤新平賞」を受賞したときもこの衣装でスピーチしている。
「受賞の背景には、人間中心主義や功利主義を排し、自然への畏敬を忘れなかったアイヌの精神性への評価があるのだろう」と記事にあった。
彼女の著書『大地よ!アイヌの母神、宇梶静江自伝』には青春時代、恋、結婚、詩を書くことへ目覚めるが、アイヌをテーマにした詩は書けなかったという。アイデンティティーを求めての長い彷徨後、38歳のとき朝日新聞の「ひととき」欄へ「ウタリ(同胞)たちよ、手をつなごう」を投稿する。その時の心境を「私の内なるアイヌは限界状態に達していたのでしょう。多くのウタリが差別を受けていることが我慢できなかったのかもしれません」と。
投稿を機に「東京ウタリ会」を結成し、東京周辺のアイヌの実態調査をおこなうなどさまざまな活動を展開するが、それはなかなか思ったような実を結ばない。
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