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2021/03/26

<随筆>◇絆を深める在日の系譜◇ 海龍 朴 仙容 相談役

 愛国心と郷土愛に家族愛、3つの愛を考えてみる。その利害が一致する時は問題ないが、時と場合で対立する。そんな時、在日は家族愛を一番大切にする。

 息子(在日3世)がベトナムで仕事を始めた。外地での息子の安全が気になる。30年ほど前の在韓時代、在日本大韓民国民団のソウル事務所を訪ねたことがある。職員が数人いたが、誰一人日本語が話せなかった。役員室をのぞくと、無人の部屋に大きな机が3つ並んでいた。表札は中央が団長、左右に議長。監察委員長となっていた。本国で有事の時、在日同胞の駆け込み寺と思っていたが、そうは見えなかった。当時、半島有事の避難場所を知らせる文書が在韓日本人に配られていたが、在韓在日人に届く有事の対処法の知らせはなかった。自力で解決しろということだ。

 もともと「難関を自力で突破せよ」との思いが、在日の脳裏に強く刻まれている。だから頼り合える「家族愛」が大切だ。そんな事情からだろう。息子が韓国の族譜とは異なる系譜を望んでいる。彼の子が成長した時、出自で悩むことが悔しいらしい。日本人と国際結婚したが、日本人化が思うように果たせず、己のルーツを気にしている。

 父、朴南在の記憶をたどり始めた。


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