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2021/04/09

<随筆>◇『すばらしき世界』◇ 呉 文子さん

 朝日新聞の読書欄に西川美和著『スクリーンが待っている』の書評が載っていた。『すばらしき世界』の制作過程を中心に、映画を作る上での葛藤や困難、喜びなどの裏側を泣き笑いと共に綴ったエッセイと記事にあった。

 私は既に西川美和監督の『すばらしき世界』を観ていた。というのも、友人の庄司洋子さんから以下のようなメールが届いたからだ。

 「今、調布イオンシネマで役所広司主演、西川美和監督の『すばらしき世界』という映画やってます。昨日見てきました。殺人の罪で、13年ぶりに出所した元ヤクザが、世間の偏見に晒されながら生きていく実在の話なのですが、その中で身元引受人として面倒を見る弁護士が出てきます。橋爪功が演じています。亡くなった義父がモデルです。とてもいい映画でした。お勧めです」

 彼女は「歴史サークル芝蘭」に所属し、足尾鉱毒問題、秩父事件、砂川事件など40年以上も日本の近現代史を学んでいるサークルメンバーのリーダー的存在。私はこの会に所属してまだ4年目だが、昨年、石牟礼道子著『苦海浄土』を基本にした水俣の学習をいったん修了し、今年からアイヌをテーマに学習を始めている。

 彼女のメールにあるように、『すばらしき世界』は彼女の夫の父親(弁護士)が実在のモデルとなっている。

 この映画は昭和の末に書かれた佐々木隆著『身分帳』をベースに時代を現在に設定しなおして映画化した作品で、人間捨てたものではないという温かさ、また社会の冷たさもありで色々な問いを投げかけられ考えさせられた。

 優しくてまっすぐで激しやすく、悪事をみれば瞬間湯沸かし器のごとくキレてしまう主人公、三上を演じている役所広司の存在は際立っていた。人生を生き直そうとする元犯罪者の苦悩と喜びの日常をきめ細やかにしかもリアルに演じきっている。


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