初めて作家の深沢潮さんに会ったのは、2018年の夏だった。韓国の某ネット新聞から取材の依頼を受け、会いに行った。深沢さんが「金江のおばさん」で「女による女のためのR―18文学賞」を受賞し、すでに多くの作品を発表していた。「金江のおばさん」が収録された『縁を結うひと』は、在日同胞同士の縁談をまとめてきた女性の話から、結婚や家族とは何かを真摯に問う作品であった。韓国にも伝えたい。私は出版社を数社まわり、『縁を結うひと』の韓国語版出版になんとかたどりつけた。そして、この夏、深沢さんの3作目の韓国語版小説が発行された。海を越え、日本にやってきた若者たちの物語『海を抱いて月に眠る』である。
在日韓国・朝鮮人のことについて勉強不足だと思わせてくれた『海を抱いて月に眠る』。この作品で驚いたことは、第1に、登場人物に少なくとも3つの名前があったことだ。通名というのを知ってはいたが、まさか3つもあるなんて、想像もしていなかった。主人公・李相周は、本名と来日後に闇市で買った米穀通帳に記載された名前、さらに日本名をもっている。第2に、彼らが民主化運動を支持していたことだ。
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