今から20年以上前、私が前職の編集者だった頃の小さな日韓交流の話をしたいと思う。私が勤めていた出版社で、韓国の外交官の、ユニークな本を出そうという話が持ち上がった。担当はハングルを知らない私で、ハングルで埋め尽くされた原著を渡されて、当惑したものだった。もっと当惑したのは、原著のタイトルを日本語に訳したのを伝えられた時で、それが『日本人とエロス』だった。
著者の韓国人外交官は、徐賢燮(ソ・ヒョンソプ)という人で、当時福岡総領事を務めていた。後で聞いた話だが、外交官としても優秀な人だったかもしれないが、むしろ学者肌の勤勉な人で、苦学して外交官になったという。そんなまじめな人が、なぜエロスか。しかし、出版された本の中身は、きわめて真面目なものだった。
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