ロシアのウクライナ侵攻により生々しい殺りくが行われ、路上に放置された遺体や、爆撃に逃げ惑うウクライナの人々の映像に戦争の悲惨さをいやというほど見せつけられていた4月下旬、私は自由劇場でミュージカル「李香蘭」を観た。原作は山口淑子・藤原作弥両氏の共著による『李香蘭私の半生』を基に描いたものである。
2015年、戦後70周年記念公演から7年の歳月が過ぎていた。7年前、友人の紹介で浅利慶太氏に直にお話を伺うことが出来た。氏は、ミュージカル「李香蘭」は、過去の怨念を乗り越え友情と平和、赦しのメッセージを込めた和解がテーマであること、そして満州国にユートピアを求め、軍に利用され、挫折してしまった人の夢の跡を李香蘭の数奇な足跡を辿ることによって戦争の悲惨さや人間の愚かさ、弱さを歴史の記憶に留めておきたい、とおっしゃっていた。
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