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2022/07/01

<随筆>◇今様の大曲【足柄】と新羅古歌【処容歌】◇板井一訓さん

 5月の中頃、思い立って更級日記のこの条の場所を歩いてみたく、足柄古道へ。父の任地である下総から都上りする途中、一四才の娘の記憶に残った幻想的なシーン。

 「足柄山といふは、……いと恐ろしげなり。麓に宿りたるに、月もなく暗き夜の、闇に惑ふやうなるに、遊び三人、いづくよりともなくいで来たり。五十ばかりなるひとり、二十ばかりなる、十四、五なるとあり。庵の前に傘をさして据ゑたり。……髪いと長く、額いとよくかかりて、色白くきたなげなくて、……人々あはれがるに、声すべて似るものなく、空に澄みのぼりてめでたく歌を歌ふ。人々いみじうあはれがりて、……見る目のいときたなげなきに、(歌い終わると)さばかり恐ろしげなる山中に立ちて行くを、人々飽かず思ひて皆泣くを、幼き心地には、ましてこの宿りを立たむことさへ飽かず覚ゆ」


つづきは本紙へ