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2022/07/22

<随筆>◇『スープとイデオロギー』を観て◇ 康 玲子さん

 ヤンヨンヒ監督の映画『スープとイデオロギー』を観た。ヤンヨンヒ監督はこれまで『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『かぞくのくに』という、いずれもご自身の家族を見つめた作品を作って来られた(私は残念なことに『かぞくのくに』しか観ていなかったが)。

 『スープと…』は、初めて監督のお母さんに焦点を当てている。総連の活動家として三人の息子を北朝鮮に送ったオモニが、夫に先立たれひとり過ごす老後の暮らし。そこに時々東京から娘(ヤン監督)が帰ってくる。兄に仕送りを続ける母に、娘の気持ちは複雑で、責める思いもあるが、監督のお連れ合いも登場して楽しい家族の食事風景が映し出される。ところが、そんな母が娘に語ったのは、済州4・3事件の体験だった。あの事件の時に母が済州島にいたなんて、娘もこれまで聞いたことのない話だったのだ。


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