千葉県柏市の二松学舎大学で13日、経済発展、構造改革、農業改革など韓国経済に関する連続講演が行われた。会場の講堂は学生、地域市民が600人で超満員となり、韓国を代表する3人の著名な経済学者の話に真剣に耳を傾けた。
特に、盧泰愚政権時代に国務総理を務めた李賢宰・ソウル大名誉教授が韓日関係に触れ、「競争一辺倒でなく、競争と協調の2本立てで進めることだ大事だ」と力説、大きな拍手が起こった。講演会は学生らとの質疑応答を含め4時間に及び、「韓日がもっと仲良くなるため隣の国の経済事情を勉強するいい機会になった」などの声が聞かれた。
講演者は李賢宰・元総理、金ジョンヒョン・新潟経営大学教授、鄭英一・ソウル大学教授の3人。「経済発展の理念」について講演した李賢宰氏は、一国の経済発展には精神文化、理念が背景にあるとの認識のもと西欧と東アジアの精神文化のあり方に言及。過度な理想主義のフランスと現実主義の英国の経験を対比させながら、「フランスは過度な理想主義ゆえ英国にくらべ近代化に遅れをとった。一方で東アジアでは、韓国は大中華思想の中国以上に徹底した理想主義だ。これに比べ日本はドイツのような民族主義があり、目的を最重視する集団生産に価値を置いている」と指摘、それぞれにエトスの違いがあることを説明した。
李氏は特に、IMFの際、日本が一斉に引き揚げたことに言及、「もう少し忍耐強く待っていてくれれば韓日関係に寄与しただろう」と述べ、「韓国は理想主義に行き過ぎる面があるが、日本はもっと理想主義を加味した中庸で現実主義を補完してほしい」と強調した。
金融・財閥改革について講演した金ジョンヒョン教授は、現在進めている構造改革は、韓国の経済社会に大きな地殻変動を起こしており、新しいシステムづくりのための不可避の改革であることを強調した。
鄭英一教授は、韓国の農政の現状について説明、食糧の高い輸入依存(2100万トン中1500万トン、自給率28%、ただしコメだけは自給)、コメ中心の農政など日本とほぼ同じで双子みたいに似ていると強調した。鄭教授はまた、民間流通の活性化、品質向上、政府の適正備蓄などを課題に挙げた。
韓国経済をテーマに今回のような連続講演を行ったのは、二松学舎大学にとって開学以来初めて。来年の国際政治経済学部開設10周年と大学院開設を記念して開いたもので、学生だけでなく広く一般に開放され、韓国経済勉強のまたとない機会になったようだ。学生たちからは「やや難しかったが、日本と韓国の違いも分かったような気もする。もっと韓国のことを勉強したくなった」という反応があり、今回の講演を企画した田村紀之教授は、「日韓相互理解のため、日本人にとっては韓国を正しく知ることが大事だ。そのため今後もできるだけ多くの機会をつくっていきたい」と語った。