97年の経済危機は、何が原因であったのか、簡単に振り返ってみたい。
当時の韓国財閥は、信用力を背景とした無担保融資で無謀ともいえる多角化経営をし、さらに財閥の海外子会社の借り入れを、親会社が野放図に債務保証した結果、財閥の倒産とそれに伴う多額の不良債権が発生した。
この時、外債の多くが短期債であったことが、流動性(短期資金)不足を顕在化させ、外貨流失を引き起こした。
しかしここで見落としてはならないのは、ムーディーズなどの格付け会社が、韓国の流動性不足から、長期債をジャンク・ボンドとしたが、IMF危機は、そのことが直接のキッカケではない。
その根本的な原因は、韓国政府に対する不信だった。
韓国政府の発表した外貨準備高・対外債務高の数値に対する疑惑、さらに破綻した財閥に多額の融資をしていた第一銀行・ソウル銀行などに、韓国政府が救済のために融資したこと、などへの不信である。
このように、97年のIMF危機は、現象的には「流動性の不足」だったが、その根底には「対外信用を失墜」させる韓国政府の言動があった。
「約束履行」不安視
2000年7月末現在、外貨準備高は900億㌦以上となり、今年の経済成長率は8|9%に達する見通しである。マクロ指標は表面的には好調である。
だが海外は韓国経済を不安視している。その原因は、原油価格の急騰、半導体価格の下落、大宇自動車の売却失敗、証券市場の暴落、など悪材が重なっていることにあるのではない。
98年のIMFなどの融資と引き換えに韓国政府は、財政収支の均衡または黒字、日本に対する輸入制限の繰り上げ撤廃、直接投資の規制緩和、財閥の財務構造改善・経営の透明性・相互支払い保証の改善、労働市場の流動性、などを約束した。
これらの約束が、3年近く経過したにもかかわらず、いくつも実施されていない、と海外ではみている。資本流動性の面では97年当時よりも改善しているが、アジア諸国の中で比較すると、短期資金への依存が再び増加しており、相対的には最も脆弱な体質にある。
大宇自の処理遅れ
韓国が現在の経済危機を克服するには、国際信用を勝ち取る行動を選択することである。韓国経済への警戒論も、アジア諸国と比較して流動性に欠けているところに、対外不信が再び表面化していることにある。
この不信に火をつけたのが、大宇自動車の売却失敗である。大宇自動車売却の決定から、すでに1年経過している。フォード・ショックは、金融・財閥構造改革が思ったほど進展していないことを裏付けてしまった。
現在、GM|フィアット、現代自動車|ダイムラーのコンソーシアムが、大宇自動車の入札に参加しようとしているが、いずれも大宇自動車の資産評価に対して、詳細な調査を要求している。
この詳細調査だけでも、かなりの日数を必要とする。売却までに1カ月間の猶予とみられていたが、売却先が決定するまでには、さらに時間がかかるとみなければならない。大宇に対する28兆ウオンの公的資金投入が、さらに増えるだけではなく、この処理の遅れは、国際信用をひどく損なうものである。
スピード処理必要
2000年7月末現在の対外債務残高は1420億㌦と依然として高水準であり、2年半で172億㌦減少したに止まっている。
加えて、500億㌦以上といわれていた親会社による海外子会社への債務保証額は、対外債務にカウントされていない。現地の本社ビルは、すぐに売却はできたとしても、海外事業の撤収には、なお時間を要するとみなければならない。
韓国経済はアジア諸国の中で流動性が決して高いとはいえない。しかも韓国政府の対応が後手後手に回るという状態が続けば、再び信用不安というキッカケを、海外に与える恐れがある。短期債務が再び増え始めている現在、韓国政府としては、大宇問題などにスピードのある処理をすることで、構造改革を対外的に強く印象付けることが最も重要である。
これが国際的に信用を回復する最善策であり、第2のIMF危機を回避する特効薬なのである。