W杯特需は5兆ウオン――。サッカーの2002年ワールドカップ開催に伴う経済的波及効果に関する韓国開発研究院(KDI)の試算だ。この特需は観光、航空、海運などにとどまらず、関連産業への波及、消費心理回復にも結びついて沈滞した景気回復の起爆剤になると期待されている。これは日本も同様だ。前回のフランスW杯の直接的経済効果が80億フラン(1兆6000億ウオン)といわれ、共催によりその利益が半分だとしても景気回復の大きい。
来年5月31日に開幕するW杯大会は31日間に延べ600億人、地球上の60億人が一度は視聴するとみられている。この世界最大のスポーツイベントW杯は、韓国のイメージアップを図る絶好の機会だ。企業にとっても自社製品とブランドを広く知らせるまたとないチャンスであり、W杯マーケティングに総力戦を展開している。
公式スポンサーのコリアテレコムの例をとってみれば、スポンサー料は200億ウオンになるが、ブランドの宣伝効果はその100倍の2兆ウオンに達するという試算もある。通常、W杯開催で7―12%の売上増大があるという。このチャンスを逃すまいと、有力財閥メーカーも家電・デジタル製品、自動車など消費財の売り込みに懸命だ。
KDIの試算によると、W杯と関連した競技場・道路建設などの投資支出、大会運営費などの消費支出は3兆4707億ウオンに達する。地方自治体を含めて財政的にかなりの負担を強いられているが、これを上回る経済的効果が期待できるというのがKDIの見方だ。
まず、付加価値創出効果は5兆3357億ウオンにのぼり、さらに生産誘発効果が11兆5000億ウオンに達する。輸出増大、観光産業やスポーツ産業の振興に加えて開催10都市を中心とする地域経済活性化が期待できる。これによる雇用創出効果は35万人にのぼる。
外国人観光客は、W杯関連で期間中に35万人訪韓する見通しだ。特に中国が韓国で3試合することが決まり、観光業界では10万人以上の中国人が訪韓し1億㌦の外貨を落とすと期待している。中国との経済的結びつきが深めるきっかけにもなりそうだ。
このように、88年ソウル五輪が韓国と韓国経済に対する認識を新たにさせる大きな契機になったが、W杯はそれ以上の効果が期待されている。だが、米テロ事件以降、W杯競技場は格好の標的になるという不安もあるだけに、安全開催に万全を期し、トラブルのない運営が何よりも大事だろう。
また、もう一つ重要なことは、開催国として韓国が16強入りすることだ。韓国が属するD組は、優勝候補に挙げられているポルトガル、欧州予選で本戦進出を真っ先に決めたポーランド、欧州のリーグで活躍する選手を中心とする米国といずれも強豪ぞろいだ。「奇跡でもなければ決勝リーグには進出できない」といった声もあるが、奇跡を実現することは監督・選手に課せられた大きな使命だろう。
在日のスポーツ愛好家は、「88年ソウル五輪で総合4位に入った時のような底力をみせてほしい。当時、まさかそこまで順位をあげるとは思わなかった。誰もが難しいと思う16強入りすることこそ最大のイメージアップだ」と話した。
韓国のマスコミは、「9日の西帰浦競技場のオープンで、10都市すべての競技場ができる。政治、経済、社会、文化など各界各層がすべてワールドカップに向け跳躍する時点だ。W杯がわが国、わがサッカーが一段階発展する梯子となるよう英知を結集しよう」と訴えている。