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2001/11/09

<総合>東アジア自由貿易圏が胎動

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    首脳会談に先立ちポーズをとる金大中大統領、小泉純一郎首相、
    朱鎔基首相(左から)

 東アジア自由貿易圏の実現へ向けての動きが本格化し出した。ブルネイの首都バンダルスリブガワンで開かれた一連の会議で、ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国は中国と自由貿易協定(FTA)を10年以内に締結する交渉開始に合意した。韓国もASEANとFTA締結へ向けての研究グループ設置に合意した。日本も検討作業を開始しており、これら13カ国が相互参加する人口19億人、貿易規模2兆3000億㌦の東アジア自由貿易圏の誕生も夢ではなくなってきた。EU(欧州連合)、NAFTA(北米自由貿易協定)と並ぶ巨大地域協力体となるだけに、3カ国経済長官会議の新設など地域経済協力強化に合意した韓国、中国、日本の主導権争いも注目される。

 金大中大統領は今回のASEANと中国、日本との首脳会議で東アジア自由貿易圏構想を積極的に働きかけることが最大の狙いだった。まず5日のASEANプラス3(韓国、中国、日本)首脳会議で、東アジアの将来像に関する研究部会の最終報告を発表、東アジア首脳会議への発展的改組、東アジア自由貿易地域の創設を呼び掛けた。

 参加国の中には、「実現は遠い将来のことではないか」という意見もあったが、地域経済活性化のために不可欠との認識で一致。議長国ブルネイのボルキア国王ネオも議長声明で「大胆だが実現可能」と評価した。各国が対等の立場で開く先進国首脳会議(サミット)のような東アジアサミットに改編する案とともに事務レベルで検討することになった。

 97年にアジアを襲った通貨危機以降、ASEAN諸国は韓中日との経済協力強化が必要と判断、これまでのASEAN首脳会議以外にこれら3カ国を含めた首脳会議を開くようになった。これをレベルアップした本格的な地域首脳会議をめざしたものだ。

 6日のASEANと中国との個別会議では、今後10年以内を目標にFTA締結のための協議開始に合意した。FTAが締結されば人口17億人、GDP(国内総生産)規模で2兆㌦、貿易規模1兆1400億㌦の自由貿易圏となる。

 だが、現実的にはこの自由貿易圏には近隣の韓国と日本が欠かせない。その資本力や技術力などに対する期待は大きく、ASEAN側からも積極的なラブコールがあった。金大統領はASEANとの個別首脳会議で、これにこたえてFTA締結の研究する専門部会の創設に合意した。また、やや慎重な日本も検討を開始した。現実的には経済的な格差などため障害が大きいが、ASEAN内の途上国には特例措置などを設けるなどして一挙に13カ国がFTA締結に向かう可能性もある。実際に交渉に入った場合、互いに競合する分野が鮮明化するのは必至であり、ASEAN内には「経済占領の恐れがある」と抵抗があるのも事実。従って、具体的な事案ごとにどうクリアしていくのが大きな課題になる。

 韓中日にとって、このFTA締結は大きな意味がある。世界の主要国で地域協力体に参加していないのはこの3カ国だけで、今後WTO体制のもとで結束して交渉力を強める必要性もある。FTAを結べば相互に関税を撤廃しなければならない。それによる域内貿易増大の効果は大きく、中国は50%増を見込めるとしている。

 金大中大統領は5日、朱鎔基首相、小泉純一郎首相による首脳会談を開き、財務及び通商長官が参加する経済長官会議の新設、経済団体と経営者でからなるビジネスフォーラム構成5項目で合意した。その他の合意項目は▽経済協力の共同研究拡大▽IT(情報技術)協力事業の発掘及び環境協力共同事業の推進▽国民・文化交流事業拡大など。3国間の経済を軸とする協力関係を強化しようというものだ。

 特に経済長官会議では、域内貿易拡大、通商摩擦予防、多者間通商問題に対する共同対処、経済・金融協力、主要マクロ経済政策協力などについて協議するため、来年から定例的に開催する。また、ビジネスフォーラムでは、中国の500億㌦規模の西部大開発、東アジア物流基地構築、韓日海底トンネルなど大規模開発事業に3カ国の資本、技術、人力を結合させるプロジェクトを模索することになる。

 3カ国の貿易規模は1兆6000億㌦に達するが、3カ国の域内貿易はその10%台の1700億㌦にとどまっている。今後、貿易拡大に向けての対策を本格的に講じるものとみられ、3カ国間のFTA論議の活発化しそうだ。

 金大中大統領がASEANプラス3首脳会議で、発表した東アジア自由貿易構想で、釜山・済州(推進中)とシンガポール、マレーシア、中国の浦東などすでに指定された特定地域を結ぶ制限的な自由貿易ベルトの形成が来年に実現可能だとしている。