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2001/09/21

<総合>臨戦態勢突入視野に

 政府は、非常経済長官懇談会を開き、同時多発テロの報復措置として米国が中東への攻撃に踏み切り、全面戦争に突入した場合に備えて緊急経済対策を協議した。政府は戦争の期間を短期終結、6カ月から1年、長期化の3段階のシナリオにそって対策を講じるとしており、とりあえず、第1段階として、30大企業グループの出資総額制限制度の緩和、内需沈滞を打開するための税制支援策を推進することを決めた。

 非常経済長官懇談会では、戦争になった場合に、次の3つのシナリオを想定して対策を進めていくことで一致した。

 まず、第1のシナリオでは、戦争が1―2週間で終わると想定し、▽追加予算の編成▽韓国銀行の貸出限度増額(1兆―2兆ウオン)▽年金基金の株式投資拡大▽公共料金の引き上げ抑制▽30大企業の出資総額制限の緩和▽従業員持ち株制度の導入を推進する。

 第2のシナリオでは、戦争の期間を6カ月から1年に想定し、▽GDP対比の財政赤字が1%から2%に修正▽金利の追加引き下げ▽証券市場安定基金の追加設置▽石油製品の弾力税率適用▽輸入原油に割当関税適用▽法人税・所得税の引き下げ▽来年度の投融資事業予算を拡大する。

 さらに第3のシナリオでは、準戦時経済体制に移行し、▽原油など物資の配給▽石油需給のコントロール▽政府の備蓄石油放出▽来年度の経済計画の全面修正を行うとしている。

 しかし、いまのところ、全面戦争に突入する可能性は低く、政府は第一のシナリオを想定して対策を講じる方針だ。特に、これまで政府部署間に見解の差があり、具体的進展が見られなかった30大企業グループに対する出資総額制限制度の緩和に力を注ぐ。

 現行では、出資限度を純資産額の25%に規定しているが、ほとんどの企業が限度枠を超えており、これを是正するために、来年末までに30大企業グループ全体で系列会社の株式約11億ウオンを売却しなければならない。このうち上場企業またはコスダック登録企業の株式だけでも5兆ウオンに達する。

 政府は、これだけ大量の株式が市場で売りに出されれば、低迷している株式市場がさらに冷え込み、景気の悪化を助長すると判断、これを防止するため、出資総額の限度を純資産額の30―40%に拡大する案を検討中だ。

 一方、政府は、民間消費を中心に内需を活性化するため、追加の減税措置を講じる考えだ。今回のテロ事件で消費者心理が急速に悪化し、景気の後退に拍車がかかるとみられることから、来年の税制改編案で提出されている所得税の税率引き下げとは別に、税制特別措置として国民の税負担を緩和する。

 また、中東戦争が勃発し、国際原油価格が急騰すれば、石油類の輸入に割当関税を適用して税率を下げ、石油を導入しやすいようにする。

 こういった緊急事態に、韓国銀行も市場の変化に合わせて金利政策を柔軟に運用すると表明、金利の追加引き下げもありえることを示唆した。

 政府は企業の資金難が深刻化することに備え、現在9兆6000億ウオンの韓国銀行の貸出限度を2兆ウオン増やし、状況を見てさらに拡大することを決定した。

 また韓国銀行の資金が企業貸出に適用されるよう、企業購買資金支援を強化し、輸出企業に対する支援も強化していく方針だ。