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2001/09/14

<総合>韓国輸出、エネルギーで非常対策

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    航空機による自爆テロ攻撃を受け崩壊する世界貿易センタービル。火煙がマンハッタンのビル群をおおっている

 米国の中枢、ニューヨークーとワシントンを11日襲った同時多発テロは死者推定1万人を超す大惨事となった。米国経済の心臓部・マンハッタンの世界貿易センター一帯は廃墟と化し、世界経済への打撃も深刻だ。株価急落、原油高騰で先行きを一層不透明にしている。特に対米依存の高い東アジア各国は対米輸出などで甚大な影響が出ており、株価も大幅に下げた。こうした緊急事態に対処するべく韓国政府は「経済非常対策班」を設置、金融市場、輸出、エネルギーなど分野ごとの緊急対策づくりに着手した。

 今回のテロ事件で米国経済がリセッション(景気後退)に陥る恐れが出てきた。ITバブル崩壊後、唯一景気を支えてきた消費がストップ、経済活動が萎縮するのは必至だ。この成長エンジン・米国経済の後退で、世界同時不況の暗雲がたれこめている、と専門家たちは警戒している。

 世界の株式市場はテロ事件の影響で株価は軒並み下落したが、特にアジア株は全面安となった。12日の韓国株式市場は53年以来初めて午前の取引を停止し、正午から取引を開始したが、売りが殺到し、株価が10%以上下落した状態が1分以上続いた時に発動される取引停止措置(サーキットブレーカー)が発動された。総合株価指数は64・97ポイント急落し475・60で終わり、下落幅は12・02%で史上最大となった。一方、日本の日経平均指数あっさり1万円割れし、香港、シンガポール株価も急落した。

 原油価格も韓国が最も多く導入している中東ドバイ産がスポット価格で1バレル3㌦以上急騰し28㌦をつけるなど、第3次オイルショックへの警戒も怠れなくなった。すでに、一部専門家の間では全世界株価下落→ドル安→米インフレ→金利引上げ→恐慌という最悪のシナリオも予想されている。心理的には準恐慌といっていい状況だ。

 韓国は米国に輸出の20%以上を依存しており、米国に向かう航空機の運航が全面ストップしたため、半導体や電子部品の輸出に支障をきたしている。輸出被害は1日3000万㌦に達すると推定されている。ニューヨーク港の閉鎖で現代自動車の車両2031台を載せた貨物船も船積みできないなど輸出業界の被害が広がる一方だ。

 政府は、輸出だけでなく経済全般に大きな影響を及ぼすと判断、12日未明から非常国務会議、緊急経済長官会議を開き、3段階のシナリオをつくって対処すると発表した。当面は、輸出企業への資金繰り支援や原油高騰に備える対策を急ぐ。

 だが、韓国経済はいま、不況風が吹いており、米国経済の回復に大きな期待を寄せていた。また、大宇自動車の売却、ハイニックス半導体の再建など構造調整が山場を迎えており、経済改革推進にも重大な時期だ。今回のテロ事件は大変なショックであるだけでなく、その影響はとてつもなく大きい。IMF危機以来の難局を迎えている。

 金大中大統領は12日、全国に生中継された国民に向けたテレビ談話で「われわれは同盟国である米国の政府主要機関が無差別テロ攻撃を受けた、悲惨で惨憺たる現実を目の当たりしている」として、「人類の生命と安全を脅かすテロ行為を強く糾弾し、人類がテロから自由になれるよう、あらゆる努力を傾注する」と強調した。

 金大統領はまた、「今回の大惨事は世界の経済・安保環境にもかなりの影響をおよぼすだろう。政府はこれを綿密に検討、緊急対策をまとめており、必ず危機を乗り越えられるよう迅速かつ適切に対処する」と明らかにした。

 この国民談話に先立って金大統領は、青瓦台(大統領府)で緊急国家安全保障会議と非常国務会議を主宰、テロの可能性に備え徹底した警戒と万全の非常対策を講じるよう指示した。また、米日中ロと北朝鮮に対して、韓半島の平和維持にむけた協力を要請することを決めた。すでに全軍と警察に対して非常警戒令を発令、米軍施設などの警戒を強化している。