韓国政府は23日、97年末の通貨危機の際にIMF(国際通貨基金)から緊急融資を受けた195億㌦のうち残った1億4000万㌦を返済し、全額返済を完了した。当初計画より繰り上げ、3年8カ月ぶりにIMF管理体制から脱却することになった。だが、IMFの政策勧告を受けず自前の経済政策を展開できるようになったものの、経済情勢はむしろ厳しくなっており、特に周辺の台湾、サインがポール、香港が急速に経済悪化に見舞われるなど第2のIMF危機到来の恐れがある。
韓国経済を指標的にみると、通貨危機再来の恐れはないようにみえる。特に97年末当時、39億㌦にまで底をついだ外貨保有高は978億㌦に増えた。日本、台湾、ドイツなどに次ぐ世界でもトップレベルの水準だ。これは、輸出を増やし輸入を抑制して貿易黒字を増やす政策が奏効したものだ。
為替レートは通貨危機直後に1㌦=2000ウオンを突破する極端なウォン安が進行したが、現在は1200ウオンに安定している。純対外債権もマイナス540億㌦から348億㌦に反転、債権国になった。殺人的な高金利も最近では4%台に突入する史上空前の低金利時代に進入した。
韓国はこの間、IMFの政策勧告も受けて大胆な金融・企業・労働・公共部門の4大構造改革を進めてきた。この過程で企業倒産が相次ぎ、200万人近い大量の失業者が出るなどの苦難を経なければならなかったが、その後の景気回復で失業者は100万人を切った。改革の仕上げは残っているが、急スピードの改革は日本の注目にもなり、経営の透明性確保など相当な成果をあげたことは事実だ。
金大中大統領はIMF卒業に際して、「IMF資金借入国から供与国に転換したことにより、国際社会での位相と信任度が大きく改善されるだろう。4大改革の持続的な推進と適切な内需振作を通じて成長潜在力を拡充し、現在の困難を克服しよう」と訴えた。だが、世界経済の回復が遅れ、韓国経済も成長が鈍化し今年第2四半期(4―6月)のGDP成長率は1・7%に落ち込んでいる。
景気回復のため内需刺激策を拡大すべきとの声も強いが、構造改革の手を緩めることへの警戒感も強い。経済専門家の間からは、「大宇自動車などの経営破たん企業の整理を急ぐ一方、外国人投資家が対韓投資意欲を失わないように強力な構造調整を実践すべきだ」という指摘が多い。
問題なのは近隣の台湾、シンガポール、香港の経済が急速に萎縮していることだ。これら3カ国(地域)は、貿易での対米依存が高いため、ITバブルがはじけた米国経済後退の影響をモロに受け、軒並みマイナス成長に陥っている。特に、輸出の落ち込みは激しく、中でも台湾の輸出は7月に前年同月比マイナス28・4%に下落した。年間を通しても2桁のマイナスは避けられない。このため台湾は通貨切り下げの動きをみせており、海外市場で競合している韓国への影響も大きくなりだ。
国内の識者の間では「シャンパンを抜くのが早すぎた」として、特に来年の大統領選を控え、97年の大統領選挙のように全体的雰囲気が弛緩するのを警戒する声があがっている。事実、財閥企業に課している負債比率200%以下の中止建議が出るなど改革に逆行する動きが起こっている。