政府は、不況が深刻化するのを阻止するため、本格的な景気浮揚に乗り出した。まず財政支出の拡大。下半期(7―12月)10兆ウオン増額論が台頭する中、金大中大統領の主宰で7日開かれた経済長官懇談会では第3四半期(7―9月)の財政支出規模を4兆3000億ウオン増やし30兆3000億ウオンに策定、景気浮揚効果が大きい道路など社会間接資本や教育施設の拡充に集中的に投入することを決めた。財政支出拡大に次いで減税カードも切られる見通しであり、金利引き下げ措置までとられると景気浮揚のための政府の政策手段が総動員されることになる。それだけ現在の景気動向が深刻な局面にあることを示している。
陳稔・副総理兼財政経済部長官ら経済関係13部署長官が参加した経済長官懇談会で決めた景気刺激策は財政支出拡大と輸出支援が2本柱だ。財政支出の大部分は高速道路や住宅建設、学校の新設・教室増築に使われる。雇用効果が大きく景気浮揚に直結するとの判断だ。
輸出支援では、LC(輸出信用状)を持つ中小企業に対して、来年まで1社当たり10億ウオンの範囲内で輸出用の製品生産に必要な資金を支援する。また、設備投資促進のため、中小企業創業及び振興資金が不足すれば15の金融機関から1兆ウオンまで使える措置もとった。
これまで政府は物価や経済改革に及ぼす影響を考慮し、景気浮揚に慎重だった。だが景気刺激へと旋回したのは、米国の景気回復が遅れており、このままいけば韓国経済が長期不況に陥り成長エンジンまで萎えてしまう可能性すらあるからだ。
財政拡大に続いて減税策もとられそうだ。これは景気回復をより確実なにするためのもので、陳稔長官は、「内需振作のため必要であれば減税政策もとらなければならない」と述べている。財政経済部で現在検討している減税案は、①消費性向の強い課税標準8000万ウオン以上の富裕層の総合所得税率を現行の40%から36%に引き下げる②各種所得控除を拡大、中産・庶民層に2兆ウオンほど減税する――というもの。
さらに金融通貨委員会では金利引き下げを決める予定だ。すでに市中金利は4%台に突入しており、2桁の高金利に慣れた韓国経済にとっては新しい実験段階に入った。
だが、このような政府の景気刺激策に対しては、「財政支出が道路建設などに集中すれば消費回復よりは物価を刺激させ、スタグフレーション(不況の中のインフレ)の恐れがある。大幅な金利引下げも物価には大変危険だ」との批判もある。減税策についても「現在税金を1ウオンも出さない免税点以下の勤労者が全体の45%を占めていることを考慮に入れると、減税の特典が富裕層に集中し貧富の格差を深刻化させる憂慮がある」という指摘があり、今後の税制改編と関連、国会で論議を呼びそうだ。