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2001/03/16

<総合>W杯成功へ シャトル便実現させよう

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    韓日交流拡大の課題などを話し合う扇千景・国土交通大臣(左)と朴恵美本紙社長(13日、国土交通省大臣室で)

 韓日間の往来が年々活発化、今年は400万人を突破する見通しだ。飛行機の座席が取れないケースも増えており、韓日が共催するサッカーの2002年ワールドカップ(W杯)大会を控え、航空能力の拡充が急がれている。羽田の国際空港化、韓日シャトル便構想などアイデアはいろいろ出ているが、このようなインフラ整備には政府の役割が大きい。扇千景・国土交通相と朴恵美・本紙社長が対談、韓日交流拡大へ向けての課題などを話し合った。

羽田の国際チャーター便の増大を期待

 朴社長 扇大臣は羽田空港の国際空港化を提唱され、論議を呼びました。それが呼び水になって夜間の時間帯ではありますが、羽田の国際チャーター便が実現し、韓国側も大いに歓迎しています。ですが、現状では真夜中に済州道に到着し、真夜中に羽田に向かわなければなりません。離発着時間の幅をもう少し拡大できないものでしょうか。また、便数をもっと増やしてほしいという要望もあります。どうお考えですか。

 扇大臣 私は、大臣になる前は年2回韓国を訪問していました関係もあり、韓国の議員の先生方と25年近いお付き合いがありますし、日韓議員連盟の副会長である関係で、知人も多く、来年はW杯を共催するのだから韓日間にシャトル便を飛ばしてほしいという要望も聞いています。
 ですが、残念ながら日本の状況はまだそこに至っていません。羽田空港もやっと夜間の11時から午前5時までのチャーター便を飛ばすことができたばかです。初日の2月16日、羽田から5便飛びましたが、切符は15分で売り切れでした。W杯に向けての一つの準備態勢だと思っています。
 問題は、W杯の共催に関連してもう少し綿密な協議が必要だと思います。便を増やすことも国土交通省だけではできません。東京都の協力も必要ですし、CIQ(税関・出入国管理・検疫)も増やさなければなりません。これは省庁全部に関わることですし、私は来週森首相に、関係閣僚会議を特別に設置すべきだと申し入れるつもりです。国内がガタガタしている状況ですが、いまの通常国会でやらないと間に合いません。この閣僚会議が設置されれば、問題点が遡上にあがり解決法もでてきます。

早期にプレクレアランス協定締結を

 朴社長 米国とカナダなどでは、大分前からシャトル便が飛んでいます。シャトル便を飛ばすにはいろいろ条件もありますが、W杯開催の来年から実施できれば、雰囲気も盛り上がると思うのですが。特に、その際、ぜひ羽田を活用してほしいのですが。

 扇大臣 W杯を成功させるための期限付きでもいいのではないですか。これなら、「なぜ韓国とだけシャトルなんですか」と他の国に言われても説明ができます。しかし、そのためにはまず日本と韓国がプレクレアランス(事前許可)協定を結ばなければなりません。W杯を成功させるためにも、この協定を早く結ぶべきでしょう。また、少なくとも韓国の五つくらいの空港に日本のCIQが派遣される必要がありますが、不足している上に行政改革のため増やすことができません。これは法改正しないとできない問題なので、そのためにも関係閣僚会議の設置が必要です。
 シャトル便を飛ばす場合、羽田か成田かという議論がありますが、私の考えは単純です。鹿島のスタジアムに行く人は成田で降りて下さい、横浜のスタジアムに行く人は羽田が当然でしょう。日本全国10カ所のスタジアムで試合が行われるのですから、一番近い空港で降りるのが当たり前でしょうと言っています。

 朴社長 韓国は93年から日本人に対してビザ(査証)なしで入国を認めています。ですが、日本は韓国人に対してはノービザを認めようとしません。W杯を前にして、その用意はありませんか。

9月に韓日共催の世界観光博成功も

 扇大臣 これは法務省が管轄する問題ですが、この問題も含めて関係閣僚会議で提案してトータルに話しあわなければなりません。せっかくノービザにしても飛行機が飛ばなければ何にもなりませんから。
 来年はW杯が開かれますが、その前にやはり韓国と共催で世界の観光博覧会が今年9月に韓国と大阪で開かれます。これも両国が共催し、世界中から集まる大きな行事ですから、必ず成功させたいと考えております。

 朴社長 アジアのハブ(拠点)空港をめざす仁川国際空港が今月29日開港します。日本でも中部国際空港の建設が計画されており、今後、韓日間の航空協力はますます重要になってくると思いますが。

 扇大臣 仁川国際空港は4000㍍級の滑走路が2本もあり、2015年には4本になるといいます。それに対して、日本の成田は一本の滑走路しかなく、国際空港と名前をつけるのが恥ずかしいくらいです。もうはるかに韓国の方が先行しており、私はこういうものが停滞していては21世紀の日本は暗くなると警告しています。
 仁川は最終的には年間1億人の旅客処理が可能だと聞いています。しっかりしたグランドデザインができているわけです。残念ながら日本にはそれがないから、それをつくるといっているのです。

 朴社長 話は変わりますが、韓国ではいま南北を結ぶ鉄道の復旧作業が進められていて、これを契機にシベリア鉄道と連結するユーラシア鉄道構想が浮上しています。日本と海底トンネルで結び、ヨーロッパまで連結する夢のある鉄道建設に韓国と協力して取り組む考えはありませんか。

 扇大臣 21世紀の夢のひとつですね。日本の橋梁、トンネル技術は世界一であり、日本だけでなく世界でももっと生かされるべきだと考えています。台湾が高速鉄道を作るということで初めて新幹線が進出することになっています。

 朴社長 韓日関係は3年前の両国首脳会談で発表したパートナーシップ宣言を契機に良好な関係築かれていますが、教科書問題がそれに水をさしています。3月末に検定結果が出る予定ですが、この問題をどう考えますか。

 扇大臣 日韓関係をこれによって、いささかも揺るがしてはならないと思っています。いまはお互いにいい関係にあり理解しあっています。日本の中にもいろんな意見をもっている人がいますが、日本の教科書は民間で製作中で、3月末までは私たちは目にしませんが、文部科学省が、指導ということで検定箇所の書き直しを指示しています。

 朴社長 私たち在日韓国人にとって、永住外国人の地方参政権問題の行方に関心をもたざるを得ませんが、与党・自民党の中には反対論も根強いようですが。

 扇大臣 私たちは参政権を付与すべきだと思っていましたが、在日の社会でも民団はしてくれ、総連はいらないとニつに分かれています。昨年、50年の壁を越え、初めて南北首脳会が実現し、私たちは驚きと共に拍手を送りましたが、在日も民団と総連が改めて話しあって意見を一本化するのがいいと思っています。

 朴社長 この問題と関連し、永住者に対する日本国籍取得問題が提起されています。在日側にも、日本国籍がほしい人もいれば、いらない人もいますが、制度自体はもっと簡略化する必要があると思うのですが。また、特別永住者に対しては戦後処理の際、欧米の国際慣例に沿って、どちらの国籍を選ぶかの選択権を与えるべきだという指摘があります。

 扇大臣 日本で生まれた人で希望する人は日本国籍をもらえばいいと考えます。欧米先進国と同じように。これも国会の問題だから、法案が通らなくてはできませんが、国際レベルに沿う形で解決をみなければならないと思います。ちょっと変な話ですが、最近では米国の国籍がほしいからといって、お産のため米国に行くという話をよく聞くほどです。もう、時間の問題ではないですか。日本で生まれた人が日本国籍を取得する権利をもつということが常識になるのは。

韓日観光ルートを

 朴社長 私どもは今年の新年号でも触れていますが、21世紀は世界的な大交流時代になると考えています。韓日間のここ数年の世代を越えた交流増大は、その予感をさらに強くしてくれますが、両国関係はいろんな意味で大変重要な時期を迎えていると思います。個人でも国でもそうですが、いい関係のためには何が大事なのでしょうか。

 扇大臣 やはり会って、話し合うことが一番大事だと思います。会って話せば個人的にも分かりあえるものです。夫婦と同じで会話がなければ終わりではないですか。そして、お互いに黄色人種であり、先祖もつながっているという気持ちがあります。
 あらゆる意味で交流し、連絡しあい、日本にきた外国人が韓国にも行き、欧州からきた人は韓国に寄ってから日本にくるルートをつくるべきではないでしょうか。韓国、日本という枠でなく、一つになって観光ルートもつくるべきだと思います。