辛長官は、昨年末の尹長官との会談で、「半導体メーカーは国内企業間の戦略的提携を通じて、世界的な優位を維持しなければならない」として、現代電子の株式のうち11・4%(鄭夢憲・現代会長の持ち分1・7%、現代商船の持ち分9・7%)を買収して、経営参加することを要請した。この戦略的提携という表現は使っているが、事実上の企業買収であり、これば実現すれば、すでにDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)では世界1のサムスン電子は、半導体全市場で米国のインテルに次ぐ世界2位のメーカーの浮上することになる。この戦略的提携は、現代電子側にも昨年末に協力を申し入れている。
産業資源部としては、国際スポット市場でDRAM価格が下がっている状況で、世界市場の占有率が20%を超す世界1、2位の両社が提携すれば、生産・販売提携を通じて世界市場を主導できるとの判断がある。また、重複投資を避けることができ、共同開発などでシナジー効果も大きいと期待している。
だが、本音は現代電子を外国企業には売却できないということだ。いまは流動性(現金)不安があるが、遠からず世界的な半導体メーカーになるとみている。実際、現代電子は昨年、68億ドルの輸出実績をあげ、韓国総輸出の5%を担当するドルの稼ぎ手だった。
だが、サムスン電子側は、このような政府の提案に対して否定的で、「国家経済のためには現代電子を再建させなければならないが、当社が引き受けても期待するようなシナジー効果は期待できない。へたをすれば同伴不良化する」との見解を表明した。
サムスン側が心配しているのは、現代電子を引き受けた場合、過剰設備の問題もあるが、昨年末で10兆5000億|ウオンに達する現代電子の負債が一番大きい。現代電子はこの負債のため利子だけで昨年1兆ウオンを返済せざるを得ず、経営が圧迫された。この負債処理問題をどうするのかが今後の鍵を握ることになりそうだ。
政府としては、サムスン電子が拒否する場合、LG電子への売却も視野に入れているが、政府が鳴り物入りで進めたビッグディール(大規模事業交換)で、99年に現代電子がLG半導体を吸収した経緯がある。この失敗に懲りず、今度は逆ビッグディールの形のなるだけにLG側が受け入れる可能性は少ない。
従って、委託経営など引き受けの形態はどうであれ、何としてもサムスン電子の協力を取り付けたい考えだ。昨年、世界半導体シェア3位と8位のNECと日立がDRAM事業を統合した例も引き合いに出されているが、デジタル企業への変身を図ってる構造調整に取り組んでいるサムスン電子がどうでるのか、政府との綱引き当面続きそうだ。
なお、データクェストの調査によると、売上基準でみた昨年の世界の半導体順位は、インテルが297億㌦(シェア13・4%)で1位。次いでシェア各5%の東芝、NECが続き、第4位のサムスンがシェア4・9%(108億㌦)で4位につけている。現代電子はシェア3・1%で9位だった。