ここから本文です

2002/10/11

<総合>過去最高の業績15兆ウォン サムスンが静かな構造調整

  • sogo_021011.jpg

                    李 健熙 会長

 今年史上最高の業績が予想されているサムスンが、系列会社ごとに静かな構造調整を推進中だ。具体的には、非生産部門を縮小、収益の少ない設備の海外移転を進める一方、リストラも継続している。これは「世界ブランドの企業といえども努力を怠れば直ちに転落する」厳しい競争時代に突入したからだ。特に来年の世界経済は不確実性が多く、状況変化に対応できる強い経営体質を構築する必要がある。そのため構造調整は常時進めなければならないという判断だ。だが、その一方で有望事業分野や研究開発に対しては思い切った投資を計画しており、人材分野でも李健熙会長が「国内外を問わず役員級の優秀人材を獲得せよ」指示している。

 今年のサムスンは、半導体事業で莫大な利益をあげるなどグループ全体の税引き前利益は15兆ウオンに達する見通しだ。だが、すべての部門で好況を謳歌しているわけでない。

 稼ぎ頭のサムスン電子の場合、原価競争力が低下しているノートブックパソコンラインの中国移転を検討し始めた。電子レンジは国内工場をタイに移転、同国を拠点に育成する計画だ。さらに、VTRやモニターなどの欧州工場もより原価の安いハンガリーやスロバキアなどに移転する作業を進めている。

 サムスン電機は、電解コンデンサー事業を売却し、偏向コイル、セラミックフィルターなど成長止まりの事業比率を縮小ないし整理することを検討している。また、携帯電話用BGA(パッケージ基盤)は釜山工場に生産ラインを集中し、効率を高める計画だ。すでに今年初め、個人用携帯端末機(PDA)とADSLモデル事業を整理、従業員を昨年6月の1万1800人から9200人に大幅削減している。人員面ではサムスン証券などで希望退職を実施。サムスン重工業はソウルの駅三洞社屋を韓国発明振興会に1225億ウオンで売却する契約を結んだ。これは借入金を返済し財務構造を強化するためのものだ。

 この数年、「選択と集中」が重要な経営判断になっているが、サムスンの構造調整も、収益性の低い事業部門は縮小・整理する一方で有望部門に対しては投資を増やす形で進められている。今年は利益の半分近い6兆5000億ウオンを未来産業などに集中投資する見通しだが、特に世界をリードしている半導体と液晶部門に対しては大幅に投資する攻撃的な事業展開が予想される。

 サムスンは当初から「人材のサムスン」といわれ、人材育成には定評がある。事業は人が育てるものという理念があるからだが、李健熙会長は最近、「系列各社は優秀人材を迎え入れているというが、経験が少ない碩・博士級人材の誘致にとどまっているようだ」と指摘、「該当分野で相当な経歴と実力を備えた役員級優秀人材を迎え入れるのに全力をあげなければならない。海外でMBAを取得した人材を誘致するのいいが、重要な役割を任せるためには国内外を問わず海外の有力企業で相当期間経歴を積んだ人材が必要だ」と指示したという。

 優秀な人材を確保できてこそ新しい試みも可能になり会社も変化させることができるという判断だ。だが、このような指示は、既存の役員には「自らの立場が弱まる恐れがある」と緊張させているという。

 一方、昨年3月に就任した李在鎔・サムスン電子常務補(34)は、最近GEで最高経営者(CEO)研修プログラムに参加している。9月の秋夕(旧盆)の日に米国に向け出発。次代の担う若いエリート役員10人が同行したといわれる。今回のCEO研修は、李会長の御曹司として来年には経営第一線に登場する布石とみられている。

 韓国を代表するトップ企業ブランド、サムスンの「休みなき改革」は次に何を生み出すのだろうか。