趙世衡・駐日大使が赴任して半年がすぎた。「韓日国民交流年」の今年、両国間で様々な文化行事が行われて交流も増え、特に韓日共催のワールドカップ(W杯)が大成功に終わり、日本にとって韓国は一層身近に感じられている。経済的にも韓日自由貿易協定(FTA)論議が本格化するなど、将来の共同市場へ向け動き出した。趙大使に韓日関係の懸案などを聞いた。(聞き手:朴恵美・本紙社長)
◆産学者が協議
朴社長 韓日自由貿易協定(FTA)の議論が本格化しており、政府も参画して検討が始まっています。この問題に対する基本的なお考えをお聞かせください。
趙大使 韓国と日本のFTAは非常に重要であり、必ず実現されなくてはなりません。日本もそうですが、韓国もこの問題について積極的な立場で臨んでいます。すでに両国間には産・学・官代表で合同委員会がつくられ、今後1-2年検討を重ね、うまくいけば両国政府代表が交渉を開始することになりそうです。
確かに、日本は韓国の農産物が入ってくることを心配しており、韓国には日本の工業製品や素材の流入を憂慮する声があります。しかし、一時的な被害を克服すれば、究極的にはお互いに競争力もつき製品の質も向上し、価格もよくなりみんなの利益になります。産・学・官委員会の前に約2年間、両国業界代表がセミナーを行い、その結論は「FTAをすべき」でした。政府間でもFTAに好意的意見で一致しており、国民間にも一部反対意見はあるが、「FTA締結賛成」のコンセンサスができあがっています。
韓国と日本の間でFTAが締結されれば、これがアジア地域のFTAへと発展する基礎になると思います。FTAは両国経済にとってウィンウィン(ともに勝利)になると評価されており、国際潮流からも韓日共同発展のためにも必要です。
朴社長 南北対話が再開され、9月の釜山アジア競技大会には北朝鮮も初めて参加します。南北関係の現状をどのように評価なさいますか。
趙大使 6月末に西海で北朝鮮が発砲事件を起こし南北関係が緊張しましたが、不幸中の幸いとでもいうのか、その後北朝鮮が事実上の謝罪を行い韓国、日本、米国とも対話を通じて問題解決を図っていきたいと態度の変化を示しました。そして南北閣僚級会談も開かれ多くの合意がなされ、南北鉄道連結のための軍事当局者会談も開催することになりました。
また、北朝鮮が釜山でのアジア競技大会に参加することを決め、南北親善サッカー大会も9月にソウルで行われました。10月下旬には北朝鮮の経済視察団が訪韓します。確かな変化の兆しであり、北朝鮮が積極的な態度を取り続けるならば良い結果をもたらすだろうと期待して見守っています。
◆年内参政権を
朴社長 日本の秋の臨時国会では地方参政権問題が再び論議の的になりそうです。大使としてはこの問題についてどのように対処するお考えですか。
趙大使 昨年7月の国会に法案が提出されてから1年以上が過ぎましたが、この間4回の継続審議となったのは遺憾です。政党や言論界にも賛成意見と反対意見があり進展していませんが、ここに暮らす定住外国人が住民の義務を果たす立場として、また権利の一つとして地域の問題決定に参加することは非常に望ましいことです。
この問題に対して日本社会が理解を示し、必ず地方参政権に関する法律が年内に通過することを希望します。大使館としてもその方向での努力を惜しみません。
朴社長 在日同胞社会で、金融機関の問題が重要課題になっています。韓信協は韓国政府に300億円の支援を求める決議をしましたが、政府としての対応をお聞かせください。
趙大使 現在、同胞社会は金融的な困難に直面しており、本国の支援が必要だと基本的には考えていますが、この問題解決のためには多大な努力が必要です。まず、各信用組合で経営の透明性や自ら預金誘致に積極的に努力して資本を拡充するなど自助努力が望まれ、専門性の向上など徹底した自主的努力が必要です。もう一つは、同胞金融界がお互いに力を合わせて協力体制を構築することが欠かせません。この2つを基礎にして、政府としてもそれ相応の支援を考えています。
同胞金融界でも、このような政府の考え方を理解して努力していると聞いています。私も困難な同胞金融に対し政府が支援するよう努めますし、そうなることを期待しています。
朴社長 最後に韓日関係、在日社会発展のための提言をお願いします。
趙大使 特に日本に住む同胞の方々は苦労も多く、現在も困難な状況にあります。だが、幸いにも韓日ワールドカップ(W杯)を契機に、日本の対韓認識が良くなっています。また、韓国経済も発展しており、そのような環境好転を同胞社会発展に結びつけられるように努力してくれればと考えています。自負心を持って、困難の中でも勇気を忘れず同胞社会の経済・社会的発展、そして本国との連帯・交流・協力増進に力を合わせてほしいと思います。