韓日両国は10日、ソウルで開かれていた政府・産業界・学界代表による第1回韓日FTA(自由貿易協定)共同研究会で、FTAの早期締結を目指すことに合意した。また、FTAの対象分野を関税だけでなくサービスや投資などを含めた包括的なFTAにすることで原則一致した。今後、3カ月に1回のペースで研究会を開き2年以内に報告書をまとめる予定だ。韓日間には相互に関税を全廃する場合、農業や工業製品分野で赤字増大などの問題があるが、政府代表も含めた会議で包括的FTA合意したことで、将来の市場統合へ向けて大きな一歩を踏み出したといえよう。
今回の産・学・官の韓日FTA共同研究会は、今年3月の両国首脳の合意により設けられたもので、さる1日の韓日首脳会談では「韓日両国ばかりでなく東アジア経済の発展にも大きく寄与する」と位置付ける意気込みをみせた。
初会議はソウルで9、10の2日間開かれ、双方から全メンバー30人が参加した。会議では①FTAの有益性②FTAの対象分野③今後の協議の進め方などについて合意。有益性については双方の貿易拡大や経済発展に資する点で一致した。ただし、日本側からは農業分野における韓国産農産物の急増問題が提起され、韓国側からはハイテク製品などの輸入急増による対日貿易赤字拡大に対する懸念があった。今後、これらの問題の対策も含め具体的に協議することになる。
FTAの対象分野については、関税の撤廃だけでなく、投資やサービス取引も含める包括的なFTA締結を提案、韓国側も原則合意した。関税や貿易手続きの障壁を最大限なくし、モノだけでなくヒトや資本、情報の移動を促進する幅広い共同市場をめざそうというものだ。今後の進め方にについては、3カ月ごとに会議を開き、2004年までに報告書をまとめ、政府間協議を進言することになる。次回会議は東京で10月1、2日に開かれる。
現在、FTAは世界の大きな流れになっており、これの経済効果は大きい。韓日間ではFTAが実現すれば人口1億7000万人、GDP(国内総生産)5兆㌦の市場が誕生する。NAFTA(北米自由貿易協定)、EU(欧州共同体)に次ぐ巨大単一市場だ。金大中大統領は、中国と日本、ASEAN(東南アジア諸国連合)を含む東アジアFTA構想を提案したこともあるが、すでに中国とASEANはFTA締結に向け動き出しており、今後東アジア市場統合の流れが加速しそうだ。
韓日間FTAについては、両国研究機関が2000年5月に研究報告を発表、「両国経済にとって市場一体化の効果は大きい」としてFTA締結を双方の政府に提言。その最大の効果として、「市場が一体化されれば両国企業の競争は激化するが戦略的提携も進み、ともに世界的に競争力のある企業が育っていく」と指摘していた。新たに設置された共同研究会ではこれらの報告書も参考にすることになるが、両国国民の間に市場一体化についての警戒感が少ないのも時代を反映している。特に、共催したW杯が大成功に終わり、世論調査結果、特に若いせだいの間で「韓日関係は今後よくなる」と答えている人が80%を超しているのも追い風になりそうだ。