未来の成長エンジンを探せ--。政府は、半導体、自動車に代わる10年後の韓国経済を支える新核心産業選定に取り組んできたが、その選定作業をほぼ終えた。専門家チームが選んだのは知能型ロボットなど10の未来産業。今月末に盧武鉉大統領に報告、最終確定する。
選定された10大核心未来産業は、①知能型ロボット②デジタルテレビ③次世代半導体④プロテオミクス(たんぱく質分析による新薬)⑤燃料電池(水素エネルギーを利用した高効率無公害発電機)⑥知能型ネットワーク⑦デジタルコンテンツ⑧次世代移動通信⑨有機EL(自体発光素子)⑩未来型自動車。
政府は、これら10大核心未来産業が確定されれば集中育成する方針だ。政府関係者は、「来月始まる予算編成作業にR&D(研究開発)投資などの支援計画として反映することになるだろう」と語った。
一方、サムスン、LGなどの大企業は、政府の10大新成長エンジンおよび技術が選定されれば、該当産業に金融・税制支援が大幅に強化されるとみて、先行投資に乗り出す動きをみせている。
このような未来産業育成に伴い、政府各部署で管轄している業務重複問題の解決が急がれている。現在、産業資源部、情報通信部、科学技術処の3部署で競い合って提示した未来技術は計119にのぼる。だが、この内20が重複している。重複支援を防ぐだけでなく、開発をめぐる部署間の葛藤も解消しなければならない。
実は、現在の政府組織では新技術は産業資源部、IT(情報技術)は情報通信部、バイオ・ナノは科学技術処、医薬・健康食品は保健福祉部とそれぞれ管轄が異なっており、今後10大産業育成が分散型になると懸念されている。
民間研究機関からは、「韓国は未来産業を統合支援できない政府組織をもっている。統合支援のためには産業的に分かれている部署を統廃合する必要がある」という指摘も出ている。
また、人材育成も緊要だ。今後、世界競争で勝ち抜く未来産業を育成するためには、これまでと比較にならない高度な人材が必要となってくる。新産業にかかわっている研究者は、「サムスンの李健熙会長は天才型の人材確保をスローガンに掲げているが、政府としてももう一段高度な人材育成システムを構築しなければならない。10年後の世界競争は人材が決定する」と指摘した。
人材育成システムとしては携帯電話で世界制覇したノキアで有名なフィンランの例がある。同国は21世紀にIT大国になることをめざし独特な人材育成システムを構築した。
1991年、22の高級職業専門学校であるポリテクニクスを設立した。実用的な学問・研究を専門にする大学だ。6年後の97年までに32校に増やし、6万3000人の高級人材を輩出した。「これらの高級人材がフィンランドのGDPの25%に相当する売上を誇るノキアの陰の立役者だ」と評価されている。
台湾でも81年にシリコンバレーに類似したサイエンスパークをつくり、米国などに流出した高級人材の里帰りを実現させた。
10大未来産業選定を契機に、効率的な支援体制や人材育成システムの構築に本格的に取り組むことが求められそうだ。