盧武鉉大統領は9日、インドネシア・バリ島での3泊4日の首脳外交を終え帰国した。ASEAN(東南アジア諸国連合)プラス3(韓・日・中)首脳会談、韓・日・中首脳会談などの多国間協議、さらに小泉純一郎首相との韓日首脳会談や温家宝首相との韓中首脳会談、マハティール首相との韓・マレーシア首脳会談など個別首脳会談をもったが、この一連の会談で域内FTA(自由貿易協定)推進などを通じた東アジア経済統合の機運が高まっていることが浮き彫りになった。韓・日・中にASEAN10カ国を含めた20億の経済圏は北米やEU(欧州連合)を大きく凌駕する。
盧武鉉大統領は8日の韓国・ASEAN首脳会談で、ASEAN10カ国とのFTA締結を推進する考えを示し、ETAを含む包括的な協力の枠組みを研究するための専門家グループの構成と、経済・通商協力のための韓国・ASEAN長官会議の新設を提案し、合意した。この積極的な提案について盧武鉉大統領は随行記者団に「WTO(世界貿易機関)体制の中で多国間・2国間のFTA締結が活発に進行される中、韓国もこれ以上この流れに取り残されれば孤立化する。姿勢を根本的に転換、積極的に対処しなればならない」と強調した。
中国はASEANと2010年をメドにFTA締結をめざしており、日本も新たに2012年を目標にASEANとのFTA交渉に踏み切った。韓国も遅れをとるわけにいかなくなったが、このようなFTAの動きは東アジアにEUのような一つの共同体形成へむけたシグナルとも受け取れる。
事実、ASEANブラス3では、「この会議を東アジアサミットに発展させよう」(ゴー・チョクトン・シンガポール首相)、「アジア経済圏の独立性を強化するためユーロのようなアジア通貨を導入しよう」という積極的な提案が相次いだ。アジアは民族、宗教、文化の違いに加え、経済発展段階が異なる国が多く、一つの共同体にまとめるのは容易でないと見られていたが、そのような線引きを超えて大きく前進しそうだ。
バリ島首脳外交ではまた別の大きな収穫があった。盧武鉉大統領は、1999年以来定例化している韓中日3カ国首脳会談で、初めて14項目からなる共同宣言文を採択した。政治・安保、経済、科学技術、文化など各分野にわたる協力のガイドラインとなるが、特にダンピング共同対処などをうたい、今後貿易紛争で3カ国が共同歩調をとることになりそうだ。会談ではまた、3カ国間のFTA締結問題も論議され、特に中国が積極的な姿勢を示した。この問題については、すでに3カ国の研究機関が報告書をまとめ今回の会談に提出した。それによると、FTA締結が3カ国の経済成長率を0.1-3.1%押し上げる効果があり、3カ国の企業家に対するアンケート結果で8割が賛成している。3カ国の人口は15億人、経済規模はGDP(国内総生産)6兆㌦、貿易総額1兆7000㌦に達し、東アジア経済統合の中軸になるだけにASEAN諸国の期待にも大きなものがあった。
一方、韓日首脳会談では、FTAとの関連でも韓国側が強く求めてきたビザ免除問題について小泉首相が「可能な限りお互いが満足できるようにしたい」と前向きな発言をした。
バリ島で展開された各国入り混じっての首脳外交は、東アジア地域の新たな協力へ向けての大きなうねりを生んだと評価できそうだ。