ここから本文です

2003/09/19

<総合>全経連が「韓国経済危機」宣言

  • sogo_030919.jpg

         厳しい経済状況を点検する左から孫吉丞全経連会長、
         李健熙サムスン会長、趙錫来暁星会長

 全国経済人連合会は16日、ソウルの新羅ホテルで会長団会議を開き、韓国経済の現状を「深刻な危機局面」と診断、政策の最優先順位を経済活性化に置くよう建議した。4時間に及ぶマラソン会議後に発表した声明で、経済状況は「政府は国家のビジョンを提示し、進むべき方向に揺ぎなく導いていかなければならない。安心して企業活動できる環境を作る上で税制や金融支援が何よりも大事だ」として画期的な対策を促した。第2次補正予算の編成、金利再引き下げなど景気浮揚策を求めたものだ。経済成長率は急カーブで低下しており、労使紛争の頻発に加え深刻な台風被害まで加わり、経済の先行き不安が高まる中での今回の財界の「韓国経済危機宣言」が今後波紋を広げそうだ。

 全経連は声明で、今年第2四半期(4-6月)の経済成長率は前年同期に比べ1・9%にとどまり、年間成長率が農作物の凶作と光州事態などでマイナス2・1%に陥った80年と、98年のIMF危機による98年のマイナス6・7%を除けば、62年の経済開発以降で史上最低値だと憂慮を表明。

 玄明官・全経連副会長は、「消費急冷と不透明な輸出展望に社会葛藤まで加わり、今年の成長率は2-3%にとどまる可能性が高い」と指摘、「政府は国民の不安な心理を安定させ、投資と消費を活性化させるとめ積極的に乗り出さなければならない」と強調した。全経連はこのため、政府と企業、国民がともに経済再建に同参することを訴えた。財界の努力としては、縮小志向的な経営から脱皮、投資活性化に積極的に乗り出すことを確認した。

 政府への要求は、①投資活性化の足かせになる新万金干拓事業や高速鉄道建設など大型国策事業をめぐる社会葛藤の早期解決②経済主体の不安心理を解消し、投資・消費を活性化するための特段の対策樹立③集団利己主義で経済運営が歪曲されないようにリーダーシップの発揮--など。労組の不法ストに対する損害賠償・仮押収を制限し、労組専任者に対する賃金支給を事実上認める政府の労使関係ロードマップにも憂慮を表明した。

 経済成長について韓国銀行の朴昇総裁は、今年の目標値3・1%を達成するのは困難と述べている。世界3大信用評価機関のフィッチはさらに厳しく、2%未満にとどまると予測した。韓国の潜在成長率5%を大きく下回るだけに問題は深刻だ。また、投資・消費不振にとどまらず、急増する青年失業は成長エンジン自体を磨耗させているという問題もある。

 全経連は、このような韓国経済の危機を克服するため、社会的葛藤構造を根源的に解決し企業活動を支えることが重要だと判断。当面、企業と国民を不安にさせる政策の中止を主張している。


 ◆ 視点 ◆

 「いまは政府と政党、企業が確固としたリーダーシップを発揮しなければならない時点であり、特に英国のサッチャー首相やドイツのアデナウアー首相、わが国の朴正熙大統領のような強力なリーダーシップが切実である」

 3カ月ぶりに16日開かれた全経連会長団会議の後、経済界の元老らを招いた懇親会で、過去のリーダーを引き合いに現在の指導力不足を問題にした財界人の声だ。

 「反企業的な情緒を解消しなければ、これ以上の外資誘致は困難だ」「国民の不安心理と企業の意欲低下が最も問題だ」「台風で地域住民の民心が尋常でない」さらに「われわれは激変の時代にいる。いまは、もうこれ以上過去のように政府に期待するのはやめよう」「このまま誤った政策を続ければ破局に向かって突き進むだけだ」と盧武鉉大統領への失望の声が聞かれた。

 財界の危機意識がかつてなく高いのには別の理由もある。孫吉丞会長がSKグローバル事件で窮地に陥ったのにLGや現代自動車グループなどは全経連にあまり協力的でないといわれていた。この日の会議にもそれらグループ会長は出席していない。逆に、全経連行事にはほとんど姿をみせない李健熙サムスン会長が会議に参加し、懇親会を主催した。会議では、孫会長就任時に産婆役を果たした李会長に対し、より積極的な役割を求めたといわれる。

 李会長はこの席で、「21世紀は経済が支配する時代になるだろう。韓国はフィンランド、スウェーデンのような小さいが強い国をモデルに一流国家建設を志向すべき」と強調した。