盧武鉉大統領は10日、3泊4日の中国国賓訪問を終え帰国した。今回の訪中では胡錦濤国家主席との首脳会談をはじめ呉邦国全人大委員長、曾慶紅国家副首席、温家寶首相ら中国指導者らと会談、92年の国交正常化以降の成果を踏まえ、政治、経済、文化など全分野にわたり両国関係を発展させる土台を作った。11項目からなる共同声明で「全面的な強力パートナー関係」を築くことをうたい、IT(情報技術)など10大協力事業を推進することに合意し、経済協力強化に大きく踏み出すことになった。今後5年内両国間の貿易を1000億㌦に倍増させることで一致したことも双方の意欲の現れといえそうだ。北朝鮮核問題への対処が内外の注目を集めたが、これは予想通り「対話による平和解決」で一致しており、21世紀の東北アジア新時代に向け両国関係は新たな段階に入ったといえそうだ。
韓中両国は、今回の盧武鉉大統領の訪中で両国関係を大きく発展させるきっかけをつくった。それは両首脳が合意した10大協力事業にみてとれる。ITはじめ先端技術や金融・流通分野での協力、中国の油田、ガス田開発、高速電鉄建設などへの韓国の資本・技術の参加、中でも中国が国策的に進めている中西部開発事業への協力が注目される。この開発事業と関連、韓国は中西部を管轄する総領事館を成都に設置することにも合意した。
また、2008年北京五輪や2010年上海万博への協力は、韓国の五輪開催経験を生かし積極的に協力することになった。IT面が中心になるとみられるが、2002年韓日ワールドカップ大会時にみせた先端通信ノウハウなどに中国側は大いに期待している。
さらに、商品展示会、投資説明会、文化イベントなどが融合された「韓中交流祭り」を2010年まで隔年で相互開催する。人的・物的交流拡大の刺激剤になりそうだ。
盧大統領と胡国家主席は、首脳会談後の共同記者会見で、「今後5年内に両国交易量を現在の2倍、1000億㌦に拡大する」決意を明らかにした。このためには年間25%以上の貿易増大が必要だが、現在韓国の対中輸出は50%近いハイピッチで伸びており、実現可能性は高い。ただ問題は韓国側の大幅出超が続いており、この貿易不均衡問題が課題だ。中国は年間500億㌦に達する世界最大の投資誘致国であり、総輸出の60%を中国進出の企業が担っている。その中核が5000万人に達する華僑である。そんな世界の工場として発展する中国への進出に韓国は本腰を入れることになりそうだ。
ただ、一部に懸念する声もある。「今回の協力事業は韓国が中国に対して技術と資本を提供することが中心だ。へたをすれば、韓国の産業空洞化と高級技術の流出の可能性が高い」というものだ。「バイオテクやナノテクから半導体に至るまで中国市場を開拓するという名目で無理な技術移転がなされれば中長期的にブーメランが襲ってくる恐れもある」という指摘もある。
これに対して盧大統領は、「韓中経済協力の深化に伴う副作用として国内産業の空洞化が起こりえるという見解には同意できない」として、「5年後に韓中貿易が1000億㌦規模になるためには、資本と技術協力が深まらなくてはならない。中国のめざましい発展の成果が韓国にもう一段の跳躍の機会を提供する視点が必要だ」と強調。
盧大統領はまた、「EU(欧州連合)にはドイツのような強者がいてもベネルクス3国のような経済も共存している。東北アジアが究極的にはEUのような経済共同体にならなけばならない」とも述べている。これと関連、今年10月にインドネシアのバリ島でひらかれる東南アジア諸国連合+3首脳会議で、韓中日3カ国の首脳会談を別途に行い、「経済協力に関する共同宣言」を発表するこことで中国側と一致した。
当初、共同声明は7日の胡主席との首脳会後に発表する予定だったが、8日夜遅くにずれ込んだ。これは北朝鮮核問題をめぐり文言の調整に時間がかかったものとみられる。共同声明では、北朝鮮と米中で行っている3者協議に韓日などを含める問題に直接触れず、「3者協議から始まった対話のモメント(勢い)が持続され、肯定的な方向に進展させていくことを希望する」と述べるにとどまった。
また、韓国側は「検証可能で不可逆的な方式で完全解決されなければならないと主張」し、中国側は「北朝鮮の安全保障上の憂慮が解消されなければならないと主張した」と、それぞれの言い分が併記された。これらの共同声明の表現は北朝鮮への配慮をにじませたもので、北の態度軟化を導き誘うという考えとみられる。
結局、注目された多者協議に対する言及はなかったが、これについて韓国側外交当局は、「中国政府の立場も多者協議を念頭に入れており、韓中の基本認識は一致している。中国側から明示的な支持を引き出すことはできなかったが、北朝鮮を配慮する中国の立場を考慮すれば期待以上の成果といえる」と述べた。
◆ 10大協力事業 ◆
①次世代IT協力
②未来先端技術協力
③中国電力事業参加
④中国資源開発参加
⑤高速電鉄建設参加
⑥環境産業協力
⑦金融IT技術移転
⑧流通分野協力
⑨北京五輪支援
⑩中西部大開発参加