盧武鉉大統領は、3泊4日の日本国賓訪問を終え、夫人・権良淑女史とともに9日、ソウル空港に到着した。帰国報告で盧大統領、「今回の会談の成功で、北朝鮮核問題の平和的解決のための韓米日の協力体制はさらに強まった。中国、ロシアをはじめ国際社会の協力も得て必ず平和的に解決する」と強調した。過去の歴史問題をめぐる謝罪問題に終止符を打ち、未来志向の韓日関係を強くアピールしたことも大きな特徴だった。盧大統領は「小泉首相と明確な歴史認識を土台に韓日関係を未来志向的な協力関係に発展させていくことで意見の一致をみた」と述べたが、韓日双方の一連の言動からみて韓日関係が新段階に入ったことを強く印象づけるものだ。今回の訪日でどんな成果をあげたのか、またどんな課題が残っているのか、検証してみた。
◆ 北朝鮮核問題
盧大統領は、今回の訪日の最大目的は北朝鮮核問題を平和的に解決するレールを引くことだと述べていたが、結果はかなり満足のいくものだったようだ。共同声明で、「核兵器はもちろん、いかなる核開発プログラムも容認しない」が、この問題は平和的・外交的に解決することで一致した。盧大統領は特に、小泉首相が「平和的解決のためには対話と圧力がともに必要」としながらも、「圧力はあくまで平和的解決の手段」と明言したことを高く評価した。対話を重視し平和解決をめざす盧大統領は、「あまり危険だと考えること自体が危険だ」と、北朝鮮への過剰反応を自制するよう日本国民にも理解を求めた。
◆ 歴史認識
今回初めて、過去の歴史問題を問わなかった。「過去を乗り越えて韓日関係の新たな未来を切り開くことがさらに重要」(宮中晩餐会での盧大統領答辞)と考えたからだ。天皇が謝罪を繰り返すことにも終止符を打った。ただし、すべてを水に流すということではない。むしろ日本が今後どんな対応をするのかを突きつけている。国民感情もある極めてデリケートな問題である。盧大統領は国会演説で、有事法制と平和憲法改正の論議について「疑惑と不安の目で見守っている」と述べた。この問題を解決する道は、今後未来志向にむけてどんな関係を築いていくかにかかっているといえる。
◆ 未来志向
盧武鉉大統領は小泉純一郎首相との韓日首脳会談で、「過去の歴史を踏まえ、未来志向の韓日関係発展のため前進することを確認」し、未来志向への決意を共同声明に盛った。そのシンボルとして韓日国交正常化2005年を「コリア・ジャパン・フェスタ2005」と定め、多様な人的・物的交流事業を展開することになった。未来志向の韓日新時代を実質的につくりあげるため、それ以外の合意事項が早期かつ具体的に実現されることが大事だろう。
◆ FTA交渉
首脳会談の重要テーマの一つだった韓日FTA問題は、「締結に向け政府間交渉の早期開始」で合意をみた。日本側が求めていた年内交渉開始には至らなかった。
最大の問題はすべての関税障壁をなくせば技術・産業力で勝る日本側に有利に働き、韓国の対日貿易赤字はさらに拡大するとの恐れだ。貿易不均衡、産業技術格差は厳然としてあり、克服していくことが必要だ。
◆ ビザ免状
共同声明には「早期に韓国国民に対するビザ免除に努力する。日本側はそのための一歩として修学旅行生らに対するビザ免除を実現する」と明記している。日本人の訪韓についてはすでに94年からビザが免除されている。韓国人に対してビザ免除に躊躇している理由として、日本側がは韓国人不法滞在者が5万人に達するなどの問題をあげている。これらの問題を双方が協力して解決し2005年ビザ免除をめざすことになりそうだ。
◆ シャトル便運航
金浦-羽田間のシャトル便は11月1日から実現する運びとなった。共同声明では「早期運航」と謳っていたが、声明の実現第一号となる。1日4便で始め、漸次拡大する方針だ。この便が実現すると、ソウル-東京間が1日経済圏化する。人的・物的交流拡大に大きく貢献しそうだ。
◆ 大衆文化開放
日本大衆文化の完全開放も時間の問題となった。98年10月に日本を訪問した当時の金大中大統領が始めて開放方針を明らかにして以来、3次にわたり段階的に開放してきた。残った分野はアニメのビデオ、ケーム機用ビデオゲーム、ドラマと娯楽番組など。
◆ 東北アジア構想
平和と繁栄の東北アジア時代を切り開こう--。共同声明や国会演説だけでなく、在日同胞懇談会など各界との対話で必ず強調したのが東北アジア構想。小泉首相とは東北アジア時代を築くため各分野で緊密に協力することで合意した。韓日は民主主義と市場経済の価値観を共有しており、両国が中核になって将来の東北アジア時代を開こうということだ。共通目標となったことは極めて重要なことだ。民放の「盧大統領、日本国民との対話」で今後の韓日関係について100人中、98人が「良くなる」と答えた。昨年のW杯を経て韓日関係は過去最良の状態にあり、今後ますます好転することが期待される。東アジア新時代は、このような韓日関係を後戻りさせることなく、さらに前進させる取り組みの中で築かれていくだろう。