バクダッド市街戦目前のイラク戦争は長期化する様相だ。短期終結の楽観論が崩れたことで、世界経済の先行きに不安感が広がっており、韓国経済にも深刻な影響が及ぶと国内の研究機関は憂慮の声を高めている。すでに中東向けを中心に船積みが保留され輸出に蹉跌をきたしており、バイヤーの訪韓中止で商談取り止めも起きている。政府は25日、原油価格の高騰に備えて石油製品の配給制を含む緊急物価対策を決め、石油、自動車業界も対策に奔走しているが、韓国にとっては、どんな「戦争経済学」になるのだろうか。
戦争が長期化するほど米国の戦費はかさむ。ブッシュ大統領は議会に対してイラク戦争費用として800億㌦を要請する計画と伝えられたが、戦費は1000億-2000億㌦かかると予想されている。91年の湾岸戦争当時は、戦費610億㌦のうち日本、ドイツなど連合国に分担してもらい、米国の負担は80億㌦で済んだ。だが、今回は事実上、米英同盟軍が戦費のほとんどをまかなわなければならない。
一発150万㌦もするトマホーク巡航ミサイルなどを何千発も打ち込んでおり、投入した米軍30万の人件費だけでも1日1億6000万㌦に達する。戦争が終わってもイラク駐留が長引けば戦費は膨らむ一方であり、巨額の貿易と財政の双子の赤字に苦しめられている米国が景気を浮揚させるのは極めて困難になる。
また、原油価格の上昇も必至と見られる。イラクは世界第2の原油埋蔵量(1125億バレル、世界の11%占有)を誇り、1日生産量は世界5位の251万バレルに達する。すでに油井が破壊されるなど生産施設に被害が生じており、原油の急騰は避けられない。さらに戦争が終わっても、イスラム諸国の反感を強く買っただけにテロの脅威はむしろ拡散する可能性が強く、世界をおおう不安感は継続する。
このような戦争による不安な情勢は、世界経済に致命的な影響を及ぼし、世界経済の成長率は当初予想の3%から1・5%に低下するとの悲観的見通しも出ている。
GDP(国内総生産)に占める貿易の比率が60%に達し、原油の70%近くを中東地域に依存する対外依存の高い韓国にとって、このような世界経済環境の悪化が及ぼす影響は深刻だ。
韓国銀行は最近の分析で、特に原油価格が上昇すれば経常収支悪化、物価上昇、企業の原価負担過重などで致命的な影響を蒙ると警鐘をならした。原油価格は最悪の場合の現在の2倍以上の1バレル=60㌦を超える可能性もあるというン見通しも出ている。
朴昇韓銀総裁は、「SKグローバルや過剰な家計貸出などの要因は韓国の健全なファンダメンタルズで克服できる風邪程度のものだ」と指摘しながら、「だがイラク戦争や北朝鮮の核問題など外部要因が影響して、成長率は当初の5・7%から4-5%に落ち込む憂慮がある」と警戒した。
民間研究機関からも否定的な経済見通しが相次いでおり、「戦後景気回復は楽観できない」という共通した見方をしている。サムスン研究所は、「戦争が早期終結しても反米感情の高まりとイスラム圏の追加テロの脅威などの不安要因が多く残っており、湾岸戦争の時のようにドル高にはならない」と指摘、「戦争が長引けば世界経済が同時沈滞に陥る可能性が高く、韓国経済は北朝鮮の核問題などの不安でさらに低下する恐れがある」と分析した。
言論界からは、「イラク戦争が長期化すれば、韓国経済は生存自体に脅威を受けることも考えられる。経済に活力を吹き込む対策を長期的な視点で打ち出さなければならない」という悲壮な声も聞かれる。
ともかく、資源が乏しく世界各国との貿易で成長を遂げてきた対外依存の高い韓国としては、世界が平和で安定した状態であることが最も望ましく、戦争や世界経済の波乱は国益と相反することが改めて浮き彫りになった。
イラク戦争による輸出被害が早くも出ているが、輸出業界ではイラク戦争が2ヵ月以内で終われば3億-4億㌦の被害にとどまると見ていたが、いまは少なくとも8億㌦に拡大するだろうと悲観的だ。
自動車業界では、戦争が4カ月以上になれば内需17万台、輸出10万台の販売減少に見舞われるとみて、対策を急いでいる。また、石油業界は、原油の安定確保のため、サウジと長期契約を増やす一方、ロシアやリビア、北海産などの導入増大に動き出した。
(写真はイラク戦争で船積みが保留になるなど輸出が中断、コンテナであふれ返った釜山港)