韓国もようやくFTA(自由貿易協定)時代を迎えることになった。政府間交渉開始から3年3カ月ぶりにチリとの間で初の正式協定を締結、今後、日本やシンガポールなどとも交渉をすすめる方針だ。世界ではすでに2国間、多国間のFTAが170余件発効しており、韓国はこの面で大きく遅れをとっていた。今回の協定締結を契機に、韓国とのFTA締結を希望する国が増えているといわれ、貿易の垣根は今後さらに低くなりそうだ。
チリとの協定は、ソウルの青瓦台(大統領府)で、金大中大統領とリカルド・ラゴス大統領が見守る中、崔成泓・外交通商部長官とクリスチャン・バロス外相代理の間で締結された。今後、国会での批准を経て批准書が交換されて30日目に発効する決まりであり、上半期(1-6月)には発効する見通しだ。
協定が発効すれば、韓国は電気銅を除くすべての工業製品に対する関税を即時撤廃し、農水産物の場合も初年度に種牛、種豚など224品目の関税を撤廃しなければならない。一方のチリは、自動車、携帯電話、コンピューターなど韓国の輸出品目の66%に当たる2300品目に対する関税を即時撤廃する。
これにより、韓国にとっては工業製品の輸出増大が見込め、特にチリ市場でシェア2位(26%)の自動車が今後日本を抑えてトップの座につくとみられている。
だが、その反面、農業分野の一部打撃が予想される。交渉が長引いたのもこの農業問題の扱いが大きかった。特にチリは果物大国で、世界市場でブドウは実に24%のシェアを占める。またキウイ(17%)、梨(17%)、リンゴ(7・6%)のシェアも圧倒的だ。協定では、韓国での市場規模が大きい梨とリンゴを自由化対象から除外した。また、ブドウの場合は現行関税を維持するが、国内生産がされない11月から4月に限って段階的に関税率を引き下げ、10年後に全廃する。また、キウイは10年、桃は9年内に関税を撤廃しなければならない。短期的にはFTA移行特別法を制定して基金を造成、被害農家の所得補填をする方針だ。
今回の初のFTA締結について、政府では①チリをはじめ中南米市場進出の橋頭堡を確保できた②日本、シンガポールはもちろん、メキシコ、タイ、ニュージーランドなど各国との協定締結に弾みがつく③対外開放を通じて韓国のイメージアップに繋がる--と分析している。
通商当局者は、「昨年10月にチリとのFTA交渉が妥結して以降、韓国との協定締結を希望する国が大幅に増えている」と明らかにした。政府は、各国とのFTA推進のため、交渉対象国選定を行うなど積極的だ。
韓国のアキレス腱、農業問題がないシンガポールとは昨年に論議が急進展しており、両国閣僚が交渉推進を約束し合った。日本とは昨年7月から産・学・官共同研究会を構成し、早ければ年内に交渉開始の可能性もある。さらに中期的には中国や東南アジア諸国を含めた地域FTAも本格的な論議にのぼることになりそうだ。