韓国経済は今年も引き続き安定成長を維持するが、業種によって大きく明暗が分かれそうだ。鉄鋼、造船、自動車などの基幹産業は昨年より成長が鈍化するが、IT景気の回復で半導体、通信機器などは大きく伸びるとみられる。大韓商工会議所と現代経済研究所の分析をもとに、業種別の景気展望を紹介する。
◆自動車―欧州市場開拓で輸出増
自動車の今年の生産は前年比3・2%増の320万台に達し、史上最高を記録する見込みだ。しかしながら、内需は前年比3・1%増の165万台にとどまり、98年以来5年連続でプラスは維持できるものの、新モデルの投入自粛、ディーゼル車の排ガス規制強化で伸び率は3・1%に鈍化する。
輸出は、韓国車の品質およびイメージ向上、起亜自動車の欧州市場進出、輸出戦略車の本格投入、GM大宇オート&テクノロジー(GM大宇自動車)の輸出再開などで、欧州やアジア・太平洋地域での販売が伸び、8・0%増の155万台を記録するとみられる。
輸入は、一部の高所得者層の需要拡大、世界の主要メーカーの韓国進出拡大で、55・6%増の2万8000台になり、増加傾向を維持する見込みだ。
◆半導体・通信―生産・輸出とも急伸長
半導体は、DRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)の需給安定、データ貯蔵型フラッシュメモリー市場の成長で価格が一定水準を維持し、世界的な需要の回復で生産は23・2%、輸出は21・3%増加。輸入もIT景気の順調な回復で非メモリーを主体に26・4%増加する見通しだ。
ただし、下期と予想されている米国および世界のIT景気回復に遅れが生じた場合、半導体産業の輸出および生産に影響し、展望値を下回る可能性がある。
一方、パソコンのアップグレード、モバイルビジネスの広がりで新型端末機への代替需要が拡大、新たな情報通信ブームが起きるとみられる。世界のIT投資が前年比9%増加し、1兆㌦を突破すると予想され、競争力のあるIT製品の輸出が大きく伸びる見通しだ。これに伴って生産と部品の輸入が増えるもようだが、輸入は主要IT製品の国産化率が高まり、増加率が低下する。
特にW杯の成功で韓国のIT製品の知名度が世界的に高まり、輸出競争力がさらに強まると期待される。ただし、イラク戦争が始まれば、世界IT市場の半分を占める米国の景気に大きな影響を与えるため、戦争が長期化するようなことになれば、韓国のIT産業が大きな打撃を受けるのは必至だ。
◆鉄鋼・造船―イラク情勢が業績左右
2001年末以降の建設需要と自動車、家電など製造業の好調で、急速に伸びた鉄鋼の内需は、昨年下期から鈍化に転じている。建設投資の停滞、イラク戦争の可能性など不安要因が多く、昨年の需要急増に対する反動で今年上期の内需は前年同期比1・8%減に落ち込む見通しだ。
しかし、下期からの世界景気の好転と国内製造業の活性化で板材を中心に内需景気が再び回復し、年間では前年比1・6%増加する。
鉄鋼は貿易摩擦が深刻で、韓国製品に対するセーフガード(緊急輸入制限措置)発動によって、米国、中国、EU向けの輸出が減少しているが、今年は世界鉄鋼需要が多少回復し、国内のローカル輸出も回復することから、輸出は3%前後の伸びが見込める。特に主要産業の沈滞で需要が減退していたEU、日本が回復に転じ、暫定的セーフガード措置をとっている中国の需要も増加すると予想される。
日本とトップ争いを演じている造船は、安値受注に対する欧州の反発が強まり、苦戦を強いられそうだ。2年連続で受注実績が落ち込み、手持ち工事量が大きく減少したため、今年は積極的な受注活動を展開、受注量は6・8%増の600万CGTに達する見込みだ。
しかし、イラク戦争が勃発し、長期化した場合、世界的な不況に陥り、海運景気も悪化して船舶発注が大幅に落ち込み、業績が急落することもありえる。91年の湾岸戦争時は、船舶の発注量が前年比20%程度減少した。
今年の建造量は、高付加価値のLNG船の引き渡しが多く、3・9%減の690万CGTにとどまるが、金額ベースでは10・5%増の108億㌦が見込まれる。
◆石化・建設―世界の需要回復に期待
国内景気の鈍化から、石油化学の内需増加率は昨年より低下し、生産は1・2%、内需は1・3%増加すると予想される。
輸出は、世界の景気回復の遅れで前年と同水準の5%台の伸びにとどまるもようだ。
建設の国内受注は上期に多少増加し、下期に鈍化するとみられる。海外受注はイラク戦争の影響で上期は鈍化するものの、下期から回復に向かう見込みだ。
民間工事は、不動産バブルの崩壊で低迷する可能性があるが、公共工事は住宅供給の拡大政策で伸びると予想される。国際原油価格の急騰を背景に中東各国の財政事情が好転し、国内建設企業の信用度向上で海外プラント受注はさらに拡大する可能性が高い。