韓国のFTA(自由貿易協定)戦略が本格化している。現在の対象国はまだ28カ国にすぎないが、来年からは2007年締結をめざしてASEAN(東南アジア諸国連合)との政府間交渉が始まる。また、EU(欧州共同体)、中国とは民間レベルの研究会をすすめており、南米のメルコスール(南米共同市場)、さらには米国とのFTA論議も活発化している。当面、核となるのは東アジア。シンガポールとは基本合意に達し、来年発効が確実になった。日本とも来年締結をめざし交渉が重ねられている。29日のASEAN10カ国と韓日中3カ国との首脳会議では東アジア・サミットを来年11月に開催するに合意、人口20億を超える市場統合へ向けた結束しようと動き出した。
ラオスのビエンチャンを舞台にした韓中日とASEANの一連の首脳会談は多くの進展をみた。盧武鉉大統領は30日、ASEAN首脳との間で、2006年末までにFTA交渉を妥結、2007年に発効させ2009年までに少なくとも80品目の関税を撤廃することで合意、このような内容を盛り込んだ34項目からなる包括的パートナーシップに関する共同宣言を採択した。
韓国とASEANの本格的な対話が始まって15年。商品、サービス、投資分野などの漸進的貿易障壁撤廃と投資円滑化などを通じて両地域の統合を深化させる計画だ。
一方、すでに2年前にASEANとのFTA交渉を決めた中国は今回、2010年までに大部分の交易品に対して関税を段階的に廃止することを決めた。日本も来年4月から政府間交渉を開始、2012年発効を目標にすることになった。
韓国は、ASEAN市場攻略に遅れをとったが、交渉速度をあげ日中より発効を1|3年早めているのが特徴だ。ASEANは人口5億、貿易高は6880億㌦(昨年)で世界10位圏に入る。対外経済研究院の分析では、このFTA締結で韓国の対ASEAN輸出は5年後には年間118億㌦の増大効果があるという。
来年11月に開催される東アジア・サミットについては、ASEANの中に慎重論もあったが、EUやNAFTAなど地域のブロック化という世界の流れの中で、東アジアだけが取り残されてはならないという共通認識が基礎になっている。韓中日は競争的にFTA協議に乗りだしており、域内の地域統合ムードが高まりそうだ。
開放型通商国家を標榜する韓国は東アジアの主要交易国である日本、中国、ASEANとFTAを結ぶのが基本戦略であり、現在の交渉日程をみると、日本、ASEAN、中国の順で締結されそうだ。
対外経済政策研究院関係者は、「東南アジアとのFTAをめぐって中国や日本とパワーゲームの様相をみせている」と指摘、「東南アジア諸国の間には、中国と日本との調停者役割を果たせる韓国とまず締結するのが望ましいとの分析が出ている」と述べた。
外交通商部関係者は、「政府のFTA戦略は東南アジアに限らず、究極的には韓国の5大交易国である米国、中国、ASEAN、EU、日本とのすべて締結するため同時多発的な交渉になっている」と述べた。
盧大統領はビエンチャンデの一連の会談で積極的な対外開放論を力説、「対外開放と貿易拡大は避けることができないというレベルを超え、積極的な戦略として採択しなければならない」と語った。韓国のFTA戦略の行方が注目される。
盧武鉉大統領は29日、リー・シェンロン・シンガポール首相と会談、同国とのFTA交渉が妥結したことを宣言した。正式署名、国会批准を残しているが、大きな争点がほとんどなく、来年中盤には発効する見込みだ。
シンガポールは年間貿易高が2413億㌦に達する世界有数の中継貿易国。酒類4品目を除きほとんど無税で輸入している。韓国にとってもむしろ、シンガポールを通じた迂回輸入を警戒しなければならない。しかし、長期的には同国を通じた東南アジア市場開拓の橋頭堡を確保するという大きな戦略上からも重要な意味がある。
特に今回、シンガポールは北朝鮮の開城工業団地で生産される製品に対して原産地を韓国にすることに合意、今後のFTA交渉の先例になると注目される。南北交易は民族内取引として関税をかけていないが、これを国際協定で初めて「民族内取引」と認定したことの意味は大きく、開城工団の販路確保にも結びつきそうだ。