ドルに対する急激なウォン円高が止まらない。24日の外為相場は、1㌦=1066・69ウオン。先月、政府のマジノ線10140ウオンが崩れて以来、ウォン高に歯止めがかからず、昨年末の1200ウオンに比べ実に10%以上の切り上げだ。輸出業界は悲鳴を上げており、政府と韓国銀行は本格的な市場介入を開始した。だが、市場関係者の間には、ドル安は世界的な現象であり、米国政府の「双子の赤字」に対する具体的解消措置が講じられない限り、ドル安、ウォン高は長期化するとの見方が広がっている。
財政経済部の崔重卿・国際金融局長は24日、全国経済人連合の企業経営協議会で、「最近の為替急落(ウォン高)の中で、企業が先を争ってドル売りに出れば共に滅んでしまう」と述べ、異例のドル売り自制を求めた。ウォン高が本格化した10月末から外為市場で企業から1日5ー10億㌦のドル売りがあり、警告を発したものだ。
特に、先週のドル安容認発言をしたグリーンスパン・米連邦準備制度理事会理事長のドル安容認発言を受け、ウォン高が急速に進み、政府は「国家経済に及ぼす憂慮が大きい」と深刻に受け止め、週明けの22日、李憲宰・副総理兼財政財部長官と朴昇・韓国銀行総裁が緊急会合を持ち、対策を協議した。この緊急会合は、これ以上のウォン高防止のため「政府が積極的に介入する」との強いメッセージを市場に送る意図もあったようだ。
実は、政府が外為市場に介入してドルを買い入れる場合、外為市場安定用債券を発行してウォン貨を調達しなければならないが、その債券発行は国会の承認を得なければならない。今年の外為市場安定用債券限度額は18兆8000億ウオンで、すでに17兆ウオンを使っており、残りも今月末に満期が到来する1兆2000億ウオンの債券返済に当てねばならないので余力がない。
これに比べ、韓銀は発券力を利用すれば理論上は無制限にドルを買い入れることができるが、発券力を動員すればインフレを煽るなどの副作用もあり、適切な対応が必要だ。
問題は、現在のドル安、ウォン高は一時的な対策で解決可能でないという点に深刻さがある。
一部で、2期目も共和党のブッシュ大統領が執権することで急激なドル安にはならないとの楽観的な見方があった。事実、ブッシュ大統領はチリでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれたチリで、盧武鉉大統領や小泉首相らとのトップ会談で「強いドル政策を行う」と表明していた。だが、これはリップサー日にすぎず、スノー財務長官や先のグリーンスパン発言にも見られるように、1兆㌦にのぼる財政と貿易の双子の赤字は「ドル安」を容認せざるを得ない状況に米国を追い込んでいる。
ドイツのシュレーダー首相は、ベルリンで開かれた先進20カ国(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、「ドル安現象は米国の貿易と財政赤字の結果でる」として早期に問題解決に取り組むことを求めた。G20会議も急激な為替レート変動への対応が急務であるとした。基軸通貨ドルの世界経済への影響は甚大であるだけに、双子の赤字放置は、米政府の大きな責任であり、緊急に対策を講じることが求められよう。
一方、ウオン高は来年以降も継続し、1000ウオン台に突入するとの予測も出ている。輸出業界にとっては厳しい環境だが、1000ウオン時代に備えた対応を急ぐべきだとの指摘もなされている。特に、現代経済研究院は最近発表した「為替下落の影響分析」と題する研究報告書で、「政府の外為市場介入は韓国経済の内外依存度を深化させ、内需回復の契機にならない」と指摘、現在のウォン高を内需回復を図り、輸出産業高度化を繰り上げることに活用しなければならないと主張している。急激なドル安、ウォンはさまざまな論議を呼んでいるが、短期的な眼目だけにとどまらず適切な政策手段を講じることが肝要だろう。
強いドルか弱いドルか――。この問題は、ドルと連動している中国の元にも直接的な影響を及ぼしている。胡錦涛・国家主席は、チリでのブッシュ大統領との会談で、固定相場制の元を変動相場制に変更相場制に移行する意思があると語ったという。周小川・人民中央銀行町は「その話をする段階ではない」と慎重だが、来年から段階的な変動相場制への準備が始まるとみらている。元は現在1㌦=8・28元で固定され、変動幅は上下0・3%だけ認めている。これをまず3-5%に拡大しようというのだ。
韓国にとって、この中国元の動きに敏感とならざるを得ない。現状の固定相場制のままドル安=元安が続けば、対外競争が韓国の価格競争力が弱まるので、変動幅が広がり元の切り上げと向かうのは望ましい現象に見えるが、問題はそう単純でない。対中輸出で打撃が予想されるからだ。
韓国の対中輸出は1ー10月の実績で409億㌦に達する。最大の輸出市場である。そのうちの70%が中国の輸出品の中間財として使われる部品や原資材だ。元高で中国の輸出が鈍化すれば韓国にも直ちに跳ね返る構図になっている。