韓国が輩出した脳科学分野で世界的権威を持つ趙チャンフィ博士(68)が、韓国とドイツ共同で5年内に商用化をめざすハイテクの脳映像撮影装置の開発に乗り出した。この装置は脳内を微細な状況まで鮮明に撮影できる「PETとMRIを融合した夢の医療検査機器」。趙博士は現在、米国のカリフォルニア大学アーバイン校物理学教授だが、国内に戻り、韓国のカチョン医科大学と世界的な医療装備メーカーであるドイツのジーメンスが共同で設立する脳科学研究所の所長として、研究を主導することになった。ノーベル賞級の夢の医療機器開発の結果が待たれる。
趙博士は、米UCLA大学教授時代の1975年に陽電子の放出断層撮影装置(PET)の原型を世界で初めて開発し、一躍世界の脚光を浴びた。そして1978年から90年までの韓国科学技術院教授時代に韓国で初めて世界最高水準の磁気共鳴画像装置(MRI)を独自開発した。脳映像の研究分野では世界最高の人物とされ、過去にノーベル賞の受賞候補に名前が上がったこともある。
そんな趙博士にとって、PETとMRIを融合した脳映像撮影装置開発は悲願だった。このPET-MRI融合装置は、人間の脳内で起こる変化を分子水準で3次元で鮮明に撮影することができる世界初の機器だ。脳内の疾患や瞬間的な変化まで、はっきりと精密観察できるだけに、実用化されれば、これまで診断が難しかったガンをはじめ、アルツハイマー、痴呆、脳出血など各種難治性の脳疾患の早期診断も可能になる。
カチョン医科大学は6日、ジーメンスと共同で脳科学研究所設立に関する合弁調印式を行い、PET-MRI装置を5年以内に商用化すると発表した。
趙博士は「年内に設計作業を仕上げて今後2年内に試作品を開発し、4|5年内に完成品を世界の医療市場に発表したい」と語った。すでに設計図はほぼできあがっており、試作品の組み立てとソフトウエア開発などが終われば直ちに試運転に入れる。この装置の市場規模は2010年に80億㌦以上と予想されている。
これまで、PETは細胞で起こる微細な変化を観察でき、疾患の早期診断が可能である一方で、解像度が弱く正確さにかけるという短所があった。また、MRIは解像度が高く正確度が高いが、神経細胞などの分子科学的な変化を観察できず、疾患がどの程度進行しているかを判断するのに限界があった。脳科学分野でハイテク機器とされるこれら機械の短所を克服し、メリットを上げる融合システムの開発は、世界医療機器業界の最大課題だった。
莫大な磁気力を発散するMRIの横にいると、PETは機能せず、MRIとPETを結合するのは、水と油を融合させるのに等しい困難さを抱えている。しかし、最近に入ってMRIが発散する磁気力を効果的に遮断できる遮閉技術が登場し、難題の解決に道が開けた。
カチョン医大は今後640億ウオンの資金を投入する計画で、ジーメンスは自社開発した最先端PETとMRIなど研究開発に必要な医療機器を提供する。PET-MRIが実用化すれば、2010年210億㌦と予想される医療映像装備市場で40%のシェアを確保できる見込み。
カチョン医大とジーメンスは今後予想される知的財産権の収入と販売収入に関して、均等分割する方針だ。また、カチョン医大はPET-MRI生産工場の誘致に関心を見せている仁川市に設立を推進する計画だ。カチョン医大の関係者は「PET-MRI販売権はジーメンスが所有するかわり、発生する収入は均等分割する」とし、カチョン医大とジーメンスは予想される知的財産権収入のうち2・5%をそれぞれ、韓国科学発展のため韓国政府に寄付することで合意している。
この製品開発には、世界で6台しか供給されていない脳科学専用(HRRT)PETと世界3ヶ所に試製品として供給されているハイテク7・0T(Telsa)MRIが活用される。
装備1台の価格が100億ウオンに達することが予想されるPET-MRI実用化は、他の医療映像分野やソフトウェアなどにも莫大な波及効果をもたらすことが予想される。新薬開発の側面でも、期待が大きい。薬物を投与する時、細胞の反応を直接観察して薬効を視覚的に検証できる道が開けたことで、臨床期間を最大限前倒しできるなど、新薬開発が大きく活性化する展望だ。
◆PETとは◆
超短寿命のポジトロン(陽電子)を放出する薬剤を人体に注入して疾患細胞を映像化する方法を使用する。疾患組識が正常組識よりもブドウ糖をはるかに多く消耗するという点に着眼し、ブドウ糖とともに放射性同位元素を体内に注入すれば、ブドウ糖消費量が多い部分がコンピューター映像で現われる。
◆MRTとは◆
原子核が放出する高周波を鋭敏なアンテナに集め、コンピューターに映像化する。人体を構成する物質に対する自己的性質を測定して、コンピューターを通じて再構成し、映像化する技術。