日本の税関がサムスンSDIのPDP(プラズマ・ディスプレー・パネル)モジュールの輸入通関を全面保留したことが韓日簡に波紋を広げている。この通関保留は、「PDP基本技術が侵害された」との富士通の要請を受け入れたものだが、サムスン側は「企業間の係争中の特許訴訟に政府が介入して、輸入禁止するのは国際的にも例がない」と反発、WTO(世界貿易機関)への提訴も辞さないと強く反発。韓国政府も李熙範・産業資源部長官が高野・駐韓日本大使に対して「事実関係を十分に検討せず一方的に輸入禁止措置を取ったのは遺憾」として通関保留措置の再考を求めた。折しも26日から始まった韓日FTA交渉でもこの問題をめぐり政府間の激しい応酬があるなど、次第に「韓日電子戦争」の様相を呈してきた。
ことの発端は、特許侵害の是非を巡る富士通とサムスンSDIの紛争。現在、東京地裁とカリフォルニア地裁で係争中だ。富士通側は、輸入の差し止めを求め、今回の通関保留(東京税関)となった。
サムスン側は「富士通の技術を侵害した事実がないのに駐韓を禁止するのは日本が韓国PDPメーカーに世界1の座を奪われたことに対する報復措置ではないか」と強く非難。業界関係者も、「半導体DRAMと携帯電話はもちろん、LCD(薄膜液晶パネル)などの世界市場で韓国企業に逆転負けしているため、これ以上の市場争奪を許さないという牽制のねらいがある」とみている。
問題は特許侵害の是非だが、両者の主張は真っ向から対立している。富士通は80年代中盤に画面を明るくする技術開発に成功、PDPを利用したテレビを世界で初めて開発した。今回の特許訴訟もこの画面を明るくする技術の特許侵害を受けたというもの。
しかし、90年代以降、韓日の各メーカーは競って独自技術を開発しており、富士通が主張する技術はすでに原理が明らかにされている。サムスンSDI関係者は、「PDP関連特許は2000ほど保有している。市場が成熟期にあり、新技術開発速度もそれだけ早い」として特許訴訟に勝利できるとしている。
PDPは3年前は日本メーカーが世界シェアの87%を占めていた。だが、韓国メーカーが急追、ついに昨年第4四半期(10-12月)には韓国がトップに立った。特にサムスンSDIは生産力を増強、今年第1四半期(1-3月)の販売量は16万8000台と40%近い伸びを示した。
業界関係者は、「日本政府が国際通商慣例を無視して通関保留という強硬措置をとったのは、相次いで世界シェアを奪われたLCDや携帯電話の轍を踏まないためだ。『PDPよお前もか』である」と述べた。
実際、日本政府はPDPやLCDで産官共同の開発センターをつくり、資金支援している。LCDで韓国と協力関係にあるソニーはこのセンターから締め出された。日本の専門家筋は、ソニーを入れると情報流出があると恐れたのだろう」と説明した。今回の通関保留の背景には、このようなシェア争奪戦をめぐる根深い対立がある。
PDP製品で韓日企業間の競争は激化しているが、ソニーなど日本のテレビメーカーは、韓国製品の購入を増やしている。
業界関係者は、今後2、3年内に日本のテレビメーカーの韓国製PDP購買は1億㌦を突破すると見ている。また、旭硝子や日本デュポン、アルプスなど日本の部品・素材メーカーは工場建設など韓国進出を本格化している。世界最大のディスプレイ用ガラスメーカーの旭硝子の場合、昨年に韓国に合弁法人を設立、PDPメーカーに供給している。
日本のPDP関連装備・部品・素材メーカーは、サムスンSDIとLG電子に年間20億㌦以上の販売実績をあげている。韓国企業は重要なお得意先であり、今回のような通関保留が長引けば影響も出かねない。
一方で、富士通以外にLCDで日亜化学、半導体装備でTELやMJCなどが韓国企業に特許侵害訴訟を起こしたり警告を発している。次世代成長産業をめぐる日本発の電子戦争がどこまで広がるのか楽観できない状況だ。