韓国総選挙が15日の投票日まで1週間を切った。与党「開かれたウリ党」の優勢は変わらないが、鄭東泳議長の「老人は投票しなくていい」発言の影響も受け、朴クネ議員を新党首にすえた野党「ハンナラ党」が地元の麗南地方でやや盛り返している。壊滅的に支持率が低下した「新千年民主党」は、秋美愛・選挙対策委員長の必死の選挙遊説で地盤の湖南地方での支持率回復に賭けている。今回の選挙で最も注目されるのは、初の全国政党を狙うウリ党が過半数を制するかどうかだ。その結果いかんで、麗南(慶尚道)と湖南(全羅道)との地域対立を軸に展開されてきた韓国政治の根本が変わる可能性を秘めている。
299議席を決める投票は15日午前6時から全国1万3167の投票所で行われる。これに先立ち9、10日に海外などに居住している不在者投票が実施される。有権者総数は3560万6832人。243の地方区に1175人が立候補、競争率は前回総選挙の4・6%をやや上回る4・8倍。ウリ党は243すべての小選挙区に候補を立てた。一方の比例区(定数56)には190人の名簿登録を終えた。立候補者数は合計1365人だ。
今回の選挙では、立候補者の若返りが目立ち、地域区で40代以下が53・7%の多数を占めているが、有権者の69・8%を占める40代以下の1票が選挙の帰趨を決めそうだ。さらに、新人候補が続出する一方、現職議員の立候補取り止めが相次ぎ、世襲政治とは無縁の選挙になっている。
1票を投じる基準となるのは政策だが、ウリ党、ハンナラ党、民主党の主要3党を見る限り、大きな政策上の争点となっていない。経済政策をみると、全国民年金制実施、理工系大学の入学金免除、賃貸住宅150万戸建設などの公約が乱発されているが、予算の裏付けのない「空約」だとの批判が強い。
違いを強いてあげるならば、「分配重視の与党に対して成長重視の野党」という構図が描ける。だが、成長目標については、ウリ党が「5年間連続5%」を掲げているのに反し、ハンナラ党は現在の政府の政策を改めない5%成長は無理だと主張している。財閥政策に関しては、親企業的なハンナラ党に比べ、ウリ党は支配構造改善、透明性強化に力点をおいている。
最も大事なのは、地域政治からの脱却だ。戦後の韓国政治は地域ボスが牛耳っていたが、いわゆる3金(金大中前大統領、金泳三元大統領、金鍾泌自民連総裁)支配は終わった。政界から引退ないし影響力が激減しているからだ。
ハンナラ党は、最大地盤である慶尚北道・大邱で前回選挙で27地方区すべてを制した。だが、今回はウリ党と多くの選挙で接戦を演じており、議席を奪われる恐れもある。民主党は本丸の全羅南道・光州で前回29地方区中、25地域制したが、今回は逆に全選挙区でウリ党にリードを許している。ウリ党は、与党の強みも生かし、全国でまんべんなく議席を確保できる見通しで、初の全国政党の誕生の可能性が高まっている。地盤を生かした野党が、どこまで反撃できるのかが後半戦の焦点のようだ。
今回の選挙では改正選挙法が初めて適用され、選挙運動に大きな違いが生じた。
まず、合同演説会・政党演説会が廃され、代わってインターネットや電話を通じた選挙運動が可能になり、テレビ・ラジオを通じた演説も可能になった。街頭遊説はできるが、車両の拡声器は停車時のみ使用できる。また、たすきがけは候補だけが着用可能だ。
従来、選挙特需を謳歌していた印刷所では名詞やポスター、印刷物の注文が増えず、頭を抱えている。逆に、ホームページ作成が相次ぎ、ネット業界は思わぬ特需にほくそ笑んでいる。選挙特需も世代交代を迎えた。だが、大統領選挙と違い、国会議員選挙ではより密着した選挙が必要であり、「ネットでは候補者の顔が見えない」と不満の声も聞かれる。