世界がFTA(自由貿易協定)時代に入っており、各国間の相次ぐFTA締結で韓国の輸出に影響が出始めている。このため、政府は延び延びになっているチリとの協定批准を2日開会した臨時国会での処理に全力を入れる一方、FTA締結対象国を拡大する方向で検討に入った。また、23日から東京で始まる第政府間交渉への対策も急いでいる。FTA問題は今年最大の通商課題になりそうだ。
産業資源部が5日発表した「主要国間のFTA締結と韓国輸出への影響」と題する報告書によると、年初に発効した米国-チリ、米国-シンガポールFTAと、3月に発効するインド-タイFTAを中心に上位100品目の輸出影響を分析した結果、韓国の輸出蹉跌額は2億-3億㌦に達すると推定された。
同報告書によれば、今年1月に発効した米国-チリFTAで韓国の対米輸出は、繊維、タイヤ、鉄鋼、自動車部品など6品目がチリ産と競合、5-10%ほど輸出市場を奪われ、年間5000万-1億㌦の被害が発生すると分析している。チリ市場では、自動車、電子機器、機械、繊維など20品目で米国製品と競合、2000万-4000万㌦の輸出蹉跌が生じるとみている。
米国-シンガポールFTA発効による輸出蹉跌も少なくなく、両市場で1億-1億8000万㌦の被害があると憂慮している。特に両国のFTAでは、IT(情報技術)、医療機器の輸出入で便宜を図る特恵制度を運用する取り決めを行っており、韓国の両国への輸出に非関税障壁として作用する可能性が高いと指摘している。
インド-タイFTAでは、対象品目が84と少なく、両国間の貿易規模も大きくないので被害は小さいとみられるが、インドに進出している日本の自動車メーカーはタイの現地生産工場から部品を無税で導入できるようになる。そうなれば、インド市場を主導している韓国の現代自動車は、タイに現地工場がないため競争力で劣勢を余儀なくされかねない。
また、現在交渉中の日本-メキシコFTAでは、メキシコ市場での日本製品に対する関税引き下げで価格競争力の低下が憂慮され、1億-2億㌦の被害が発生するとみている。
特に、メキシコは1月1日からFTA未締結国に対してはタイヤ輸入関税を大幅に引き上げ、韓国産タイヤは対メキシコ輸出が全面中断の危機に直面している。
産業資源部では、「最近では投資、政府調達、規格認証、環境など非関税障壁の憂慮がある分野までFTAの対象に含まれている」と指摘、「チリはもちろん、主要国とのFTAを速やかに締結し、対象国を拡大する必要がある」と指摘している。
シンガポールとのFTAは年内に締結、発効する見通しだ。第1回政府間交渉が1月27から開かれ、大きな問題なく基本的な枠組みに合意した。外交通商部によると、「交渉は相当に進展した。年内の適切な時期に協定文に署名、批准手続きに入れそうだ」と述べた。今後9月までに隔月で4回交渉をもち、協定案文作成に入る。
韓国が一番最初に締結したチリとのFTA批准見通しがでてきた。政府・与党は9日の処理をめざしているが、最大野党・ハンナラ党の崔秉烈代表は、「臨時国会でFTA批准同意案に責任を持って処理する」と明らかにした。臨時国会の会期は29日。