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2005/12/16

<総合>「東アジア共同体へ動き出す」

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               東アジアサミットで隣同士の韓日首脳

 東アジア地域が経済統合へ向けて動き始めた。マレーシアの首都・クアラルンプールで14日、ASEAN(東南アジア諸国連合)、韓国、中国、日本にインド、オーストラリア、ニュージーランドを加えた16カ国が参加して初の東アジアサミット(首脳会議)を開かれ、東アジア共同体形成をめざすクアラルンプール宣言を採択した。これに先立って12日開かれた恒例のASEAN+韓日中首脳会談ではさらに踏み込んで、東アジア共同体の実現時期を2020年に設定、ASEAN+韓日中がその主導的役割を担うことに合意している。地域共同体の範囲に一部異論が出ているが、南アジアのインドや大洋州のオーストラリアまで加えることになれば、人口30億人、GDP(国内総生産)8兆2000億㌦の巨大市場が誕生する。
 
 初の東アジアサミットは、採択した宣言で「この地域の共同体形成に重要な役割を果たし得る」との決意を表明、毎年サミットを開催することを決めた。来年はフィリピンのセブ島で開かれる。

 宣言は、東アジアにおける平和、安定、経済的繁栄の促進を目的とした対話のためのフォーラムを設置し、①公正、民主的かつ調和的な環境で平和的に共存するための政治・安保問題についての戦略的対話の進展②人道支援、金融協力、エネルギー安全保障、貧困撲滅③国民生活と福祉向上、環境保護、感染症予防、自然災害被害の軽減――などの分野で協力を促進することを謳っている。

 サミットは「開放的、包含的、透明かつ外部志向」をうたっているが、東アジア共同体の範囲をめぐって、ASEAN+3(韓日中)を主軸とすべきだとする中国やマレーシア、タイに対してインドなどに広げるべきだとする日本との間での意見調整が急がれている。だが、参加枠をオーストラリアなどに広げ中国の影響力を抑えたい米国の意向もあり、複雑な様相を呈してる。今回、オブザーバー参加したロシアのプーチン大統領からは来年からの参加を希望しており、その範囲をどこまでに限定するのかが大きな課題になっている。
 
 東アジア共同体が実現すれば、それはEU(欧州連合)やNAFTA(北米自由貿易協定)に並ぶ巨大な共通市場になる。参加国がASEANと韓日中の13カ国に限定するとしても、その規模は人口20億人、GDP7兆㌦に達する。

 盧武鉉大統領は、今回のサミットで、「東アジア共同体に発展させていくべきである」として、その方式として持論のEU(欧州連合)の統合過程を提示した。その後、「その過程の核心は過去の秩序の徹底した反省に基づく」と強調。「ドイツは領土の一部まで放棄し、過去の歴史認識を徹底して清算した。国家の名で戦争を行い、隣国に苦痛を与えた人々の追悼施設は一切作らなかった」と述べ、小泉首相の靖国神社参拝を公然と批判。

 この靖国問題が影を落とし、恒例の韓日中首脳会談は今回は開かれなかったが、サミット開催前の控え室で3、4分の短時間、3カ国の対話が実現、韓流などを話題に言葉を交わした。東アジア共同体で韓日中3カ国は、重要な役割を担わざるをえないだけに、ASEANなど関係国も早期に関係修復することを願っている。