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2006/05/12

<総合>韓国出生率、世界最低の1.08人

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 少子化が急速に進んでいる韓国で、合計特殊出生率が1・08人を記録した。これは、1人の女性が生涯でほぼ1人しか子供を産まないことを示したもので、世界最低値だ。30年前の4人水準と比べると、少子化のスピードは世界最速になる。このままいくと、人口が減少する中、2020年には労働力の50%は50歳以上が占めると予想され、「国家の経済基盤が揺り動かされかねない」と衝撃波が広がっている。

 統計庁が8日発表した「2005年の出生統計暫定結果」によると、昨年の合計特殊出生率は1・08人にとどまり、前年の1・16人をさらに下回った。新生児数は43万8000人で、前年比3万8000人減(7・9%)だった。25年前の80年に比べ半減しており、恐ろしいような減少スピードだ。

 韓国の合計特殊出生率は、少子化で悩む日本の1・29人よりもかなり低い。また、米国は2・04、フランスも1・90人と主要先進国はむしろ出生率上昇傾向にあり、韓国との差は今後さらに広がりそうだ。

 韓国はいまや世界で最も子どもを生まない国である。統計庁当局者は、「国連人口基金統計をみると、香港の出生率が0・95人で世界で最も低いが、香港は中国に編入されているため、国家基準でみれば韓国の出生率が全世界で最も低い」と説明している。

 韓国の合計特殊出産率は1970年の4・53人から80年2・83人、02年に1・17人と急降下。世界のどの国も韓国の1・08人のような低出生率を記録したことがない。これまで最低はイタリアの1・18人(97年)。

 韓国では、女性の初婚年齢が95年の25・4歳から昨年には27・7歳に高まり、晩婚化が進んでいる。この結果、30代で子どもを生む比率が昨年50・3%に達し、初めて20代を上回った。10年前の95年には30代の出産比率が25・1%にすぎず、20代が圧倒的に多い73・4%を占めていた。

 教育水準の向上に伴い、女性の経済活動参加率は04年に53・9%に高まったが、OECD(経済協力開発機構)の中ではまだ最低水準にある。つまり、今後、出産する年齢がさらに高まる可能性があることを示している。

 韓国でなぜ出生率が急速に低下しているのか。原因は様々なことが言われている。専門家たちは、①女性が子どもを育てながら社会活動をしにくい養育環境②将来の所得に対する不確実性③高い住宅費、高い教育費④就職・雇用不安など経済的な要因をあげ、「これが既婚女性は育児より仕事を選択し、未婚女性は結婚を遅らせる要因として作用しているのではないか」というのだ。

 出生率がこのまま進めば、2017年から人口減少が始まる。2050年には韓国の人口は現在の4800万人から4000万人に減少すると試算されている。最大の問題は、人口が減ると仕事をする人が不足し、経済成長力が減退することだ。

 現状では労働力不足は2020年に152万人に達し、潜在経済成長率は現在の4~5%から2040年代には0・74%に墜落する見通しだ。

 韓国で出生率が2人以下に下がったのは22年前の84年。だが、その後も産児制限政策がとられた。政府が本格的に出産奨励へと政策を転換したのは03年からだ。いかにも立ち後れの感がある。

 「出生率1・08人は国家の非常事態だ」という見出しを掲げた朝鮮日報社説は、「韓国の人口危機は結局のところ、女性たちが今の社会状況では子供を生むわけには行かないと感じているためだ。妊娠あるいは出産したことで職場での立場が悪くなるような状況から、そうした女性を宝物とみなす雰囲気へと社会も企業も変わるべきであり、まず政府がその先頭に立たなければならない。労働関係法や民法が足をひっぱるなら、さっさと変えてしまえばいい。意識も制度も慣習も法も、残らず改造するという覚悟がなければ、女性の出産忌避を止めることはできない」と主張している。