韓国と米国間の第1回FTA(自由貿易協定)交渉が5日からワシントン17番街の米通商交渉部(USTR)会議室で始まった。双方の交渉団は総勢342人(韓国側164人、米国側178人)に達し、両国が今回のFTA交渉をいかに重視しているかをみせつけた。9日まで双方の草案を単一の統合案にまとめるため意見接近を図ることが今回の最大課題。だが、農業問題や金融サービス市場開放、開城工業団地生産品の韓国産認定問題をめぐって予想通りの論戦が闘わされており、楽観できない情勢だ。
交渉は、双方の団長と17の分科委員長が参加する全体会議と各分科委員会別に開かれている。初日の全体会議で、金ジョンフン・韓国側首席代表は、「最終的に、双方が期待する利益が均衡にならなければならない。お互い相手の敏感な品目に対してはある程度尊重すべきだ」と今交渉に望む2大原則を示した。
これに対して、ウェンディー・カートラー・米国側首席代表は、「USTR勤務18年の中で、最も重要な仕事をしている点に栄光と重い責任を感じている」としながら、「今週末までに統合協定文作成に全力を尽くす」と呼応した。
統合協定文は、双方の草案を逐条審議して項目ごとに単一文案化するが、見解差が大きい場合は両論併記になる。今回の交渉で最初に統合協定文をまとめることができた競争と労働分野でも一部両論併記となった。すべての分野で統合協定文がまとめ上げられるかどうかで、今後の交渉に及ぼす影響にも違いが出てくる。
17の分野は①商品②農業③繊維④原産地⑤通関手続き⑥貿易規制⑦技術障壁⑧投資⑨国境間サービス貿易⑩金融サービス⑪通信サービス⑫電子商取引⑬競争⑭政府調達⑮知識財産権⑯労働⑰環境となっている。広範囲の分野にまたがる高レベルのFTAであり、韓国経済の今後の発展にとっても重大な意味を持つ。米国にとっても、カナダ、メキシコとのNAFTA(北米自由貿易協定)以来、最大のFTAであり、産業界も極めて重視している。
スケジュール的には、かなりのハイスピードで進める予定だ。今回の交渉後、来月10日からソウルで第2回交渉をもち、9、10、12月と連続的に行い、年内にめどをつけ、来春までに妥結を図ろうというものだ。だが、双方の見解差が大きすぎる争点分野の妥結は容易でない。
韓米FTAの最大争点は、①コメなど農産物市場開放②開城工業団地の生産品を韓国製と認定する問題③金融・法律などサービス市場開放④自動車税制と医薬品関連の韓国内法制度改善⑤米国の自国繊維市場保護措置――の5つ。
韓国側は農産物交渉で、農産物輸入で被害が生じれば輸入農産物に対して自動的に関税を賦課できる緊急輸入制限制度(セーフガード)導入を要求している。また、開城工団生産品の韓国製認定のため、「域外加工方式」による原産地特例条項の導入を主張しているが、米側は、「韓米間の問題でない」として、草案にこの案件自体を入れていない。
米国の競争力がある金融サービス分野では、米側が新金融サービスの韓国内供給を認めるよう要求している。これは韓国にはない金融派生商品などの販売を意味し、市場攪乱を懸念する韓国としては避けたいところだ。特に自動車税制で、米側は排気量基準の税制を価格基準に変更するよう強く求めている。これに対して、韓国側は、「米国だけに税制変更を認めるわけにいかない」と徹底抗戦する構えだ。また、韓国側は、米国の無原則的な反ダンピング制裁措置を抑えるため発動要件の強化を求めている。
一方、交渉会場周辺では韓国から来た韓米FTA阻止遠征隊40余人と米国の反戦・グローバル化反対団体100余人が、連日、街頭デモや集会を繰り広げている。逆に米財政界は例外のない市場開放を要求している。