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2006/09/15

<総合>サムスン電子が半導体革命

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 サムスン電子が、親指の爪先ほどの大きさに世界中の道路・海路・航路情報をすべて収めることができる大容量のNAND型フラッシュメモリー半導体を世界で初めて開発した。特に、この半導体開発過程で、導体ではない不導体にも電気を保存できるという発想の転換を行い、通電しない物質を用いる画期的な技術革命も成し遂げ、集積度を飛躍的に向上させた。この技術が進化を遂げれば、人工知能を実現する半導体開発も夢ではない。サムスン電子は、無限の可能性を秘めた半導体開発の新たな章を切り開いた。

 サムスン電子の黄昌圭・半導体総括社長は11日、ソウルの新羅ホテルで記者会見を開き、世界で初めて40ナノ(1ナノは10億分の1)工程の32ギガ(1ギガは10億)ビット(Gb)のNAND型フラッシュメモリーを開発したと発表した。

 今回発表された半導体は、厚さが髪の毛の3000分の1のトランジスター328億個(世界人口の約5倍)を親指の爪程度の面積にびっしり敷き詰めたほどの高集積度を誇る。

 特に、今回の32Gbフラッシュメモリー開発過程では、絶縁体(電気や熱が通じない物質)を半導体開発に使う「CTF(チャージ・トラップ・フラッシュ)」という技術を導入して成功した。これは、電子製品の開発で絶縁体を応用するのは難しいというこれまでの常識を覆す、一種の技術革命である。

 サムスン電子は2008年から32Gbフラッシュメモリーの量産を開始し、32Gb16枚でつくる64GB(ギガバイト)メモリーカードを電子製品に組み込むことを目指している。このカード1枚で日刊紙400年分、10枚で韓国国会図書館の蔵書220万冊に関する情報を全て保管し、検索できる「持ち運びできる図書館」も実現する。また、消費者はMP3ファイル約1万6000曲、超高解度写真3万6000枚、DVD映画も40本を貯蔵でき、世界の地理情報を含むナビゲーションシステムを搭載すれば、世界中のどこにいても簡単に目的地を探せるようになる。

 サムスン電子が今回発表した半導体開発技術CTFは、従来の常識を覆す画期的な技術だ。このCTF技術によって、それまで世界の半導体業界で不可能とされてきた50ナノ(1ナノは10億分の1)未満の工程技術開発が可能になった。

 開発に着手したのは5年前。黄昌圭・半導体総括社長は「電荷を絶縁体に貯蔵して集積度を高めるということはこれまで誰も考えなかった。過去35年間インテル、東芝などの世界的メーカーが同じような技術開発に乗り出したが、失敗した」と述べ、「コロンブスの卵」のような発想の転換が今回の新技術開発をもたらしたと強調した。

 1999年以降7年連続で「黄の原則(半導体の集積度が1年に2倍ずつ増加)」を立証してきた黄社長は、「CTF技術は今後、20ナノ工程での128ギガ・フラッシュメモリー開発にもそのまま適用できる。NAND型フラッシュメモリーの大容量化に、決定的に寄与する」と説明した。

 CTF技術は1971年に非揮発性メモリーが初めて開発されてから35年間適用されてきた「フローティングゲート」技術の限界を乗り越えた革新的技術である。この技術により、電気が流せる導体に情報を保存する半導体とは違い、サムスン電子が自主開発した不導体の新物質「タノス」に電気を貯蔵し半導体素子の大きさと幅を画期的に縮小することを可能にした。元祖半導体技術とされてきたインテルの源泉技術である製造法は歴史に埋もれることになった。今後50ナノ未満の製造工程を採択しようとする業者は、サムスン電子にロイヤルティを支払わなければならない。