韓国のFTA(自由貿易協定)網が広がりを見せている。外交通商部によると、ASEAN(東南アジア諸国連合)とのFTA交渉は商品貿易部門で最終妥結した。韓国で4番目のFTA締結だ。また、6月5日からはワシントンでいよいよ韓米FTA交渉が始まる。さらに、EU(欧州連合)とも交渉開始へ向け動き出した。中国とは推進中であり、主要国では日本との交渉だけが頓挫状態だ。だが、国内では、特に韓米FTAについて、「なぜ、いまそれだけ急ぐ必要があるのか」と慎重論が起こっている。
外交通商部の通商交渉本部は16日、韓国政府はEUとFTA交渉開始のための予備実務協議を行うことで合意したと発表した。25の会員国で構成されるEUは、中国、米国に次ぐ韓国第3の輸出市場(昨年の輸出額437億㌦)。EUとFTAが締結されれば、工業産業製品、農産物、サービス業など国内産業全般にわたり韓米FTAに劣らぬ大きな影響を及ぼす見通しだ。
金鉉宗・通商交渉本部長はこの日、フィリピン・マニラでピーター・マンデルソン・欧州委員会通商担当委と会談を行い、FTA推進の可能性を追求するため、局長級の予備協議を来月にも開始することで合意した。予備協議が順調に進めば、今後1年以内にFTA締結のための政府間交渉に着手することになる 。
今回の予備交渉開始はEU側が積極的といわれ、韓米FTA交渉開始に刺激を受けたものとみられている。対外経済政策研究院は、EUとのFTAで中長期的に年間190億㌦の貿易拡大効果があると分析している。
一方、今年の年頭会見で盧武鉉大統領が力点を置いた韓米FTA本交渉を控え、韓国内で急激に慎重論が台頭。先頃開かれた韓国貿易協会主催の討論会で、進歩派学者らは「ただちに中止すべきだ。我々に得るものはなく、両極化を深刻化させるだけだ」「開放するにしても戦略的にすべきなのに、順序が逆だ。米国とのFTA締結は一番最後にすべきだ」という反対論を展開した。
元副総理の経済学者・趙淳氏も、15日の韓米経済学会フォーラムで「韓米FTAはこの国の将来を左右するほどの重要な意味がある。当局は電光石火のように処理しようとしており、正常な状況ではない」として、慎重論の理由を次のように説明した。
「IMF危機直後の圧縮改革のように韓米FTAを圧縮交渉すれば、後遺症が大きい。IMF後の急激な改革の結果、両極化現象が深刻化し、成長動力弱化で経済活力が回復していない。これを教訓にすべきだ」
政府は年内妥結をめざしているが、十分な対応が必要なようだ。実際、米国は、近隣のカナダ、メキシコなどを除いて、日本、EU諸国など主要国とは交渉にも入っていない。
一方、米自動車業界は韓国市場を狙い、ロビー活動を強めている。