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2008/10/10

<総合>歯止めなきウォン安・IMFショック以来の「暴走」

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 米国発の金融危機で世界の金融市場が激震に見舞われる中、韓国はウォンの暴落(価値下落)に歯止めがきかず、ソウル外為市場がパニック状態に陥っている。8日の相場は、1㌦=1395・00ウォンと前日より79・41ウォン安で取引を終えた。4営業日連続の下落で、98年9月22日以来の安値となり、「10年前の通貨危機の悪夢再来か」と不安感を高めたが、翌9日には一時1㌦=1485ウォンをつける異常なウォン安へと「暴走」した。株式市場も不安な値動きを見せており、9日の総合株価指数は1294・89をつけた。8日は前日比79・41ポイント(5・81%)の下落。今回の金融危機下で最大の下げ幅で、年初の1853・45に比べ600ポイント近い下落だ。政府の緊急対策を求める声が強くなっている。

 韓国銀行によると、ドルに対するウォン価値は、今年1月2日の1㌦=938・20ウオンからこの9カ月余で49%切り下がった。対円レートも年初の100円=837・27ウオンから1395・11(9日午後3時現在)と大幅なウォン安が続いている。

 9日の為替市場はさらにウォン安が進む崩壊寸前の状態に陥り、ドルに対するウォン価値は50%を超し半分以下になってしまった。政府はこれに大規模介入し、1379・50ウォンで引けた。介入がなければ1500ウォン台突破が必至だった。

 この米国発の世界的金融危機に伴うウォン安と金詰まり現象の火の粉は、輸入業者だけでなく韓国企業全体に及んでおり、外為市場に供給されるドル資金が通常の半分に減少したことから、ドル資金の確保が深刻化している。原材料の輸入比率が高い企業や通貨オプション取引で損失を出した中小企業はウォン安と資金難という二重苦に直面しており、黒字倒産の危機に瀕する企業も出てきた。

 特に看過できないのは、これまで推定5兆ウォンの被害を中小企業にもたらしているとされる通称「KIKO(ノックイン・ノックアウト)」という通貨オプション取引だ。これは、一定範囲までのウォン高は為替ヘッジしてくれるが、ウォン安の下限はないため損失が際限なく広がるというもの。ウォール街の金融工学が開発した複雑な構造の投機性デリバティブ商品であり、急速なウォン安でその危険性が露わになった。問題は銀行がその危険性を周知させずに勧誘した点で、被害を受けた中小企業は救済を求め国会にデモンストレーションする事態にまで発展している。

 多くの企業はウォン高を警戒して今年の経営戦略を練った。政府も当初ウォン安を誘導した(原油高騰を景気に失政だと批判を浴びた)。だが、大幅なウォン安というまさかの展開になっている。他の主要国と比べても韓国通貨の下落が最も高い。国民の不安心理も大きく影響している。

 政府は、楽観もできないが過度な悲観は慎まなければならないと、市場不安心理を遮断することに必死だ。李明博大統領も8日、「ドルの価値がどんどん高まるためドルの買占めが起こる。ドルを持っていればドル高になり、換金すれば金持ちになれると考える人や企業もあるが、国が困難なときに個人の欲を持ってはいけない」と指摘し、「今の韓国は事実上、懸念するだけの根本的な理由はない。政府を信じてあまり怖がらないようにしてほしい」と呼びかけた。韓国が現在保有する2000億ドルはすべて現金化が可能な外貨で、外貨不足の心配はないとの立場だ。

 だが、専門家らは、「政府の為替防衛能力が疑われているのに加え、10年前のIMFショックという心理的な傷跡が記憶の中に残っており、銀行・企業・個人のレベルで危機意識があまりに強い。しかも、投資家・国民が政府の対策を信頼しないため、市場が過度に鋭敏に反応している」と指摘している。また、韓国は輸出依存経済で金融危機ばかりか実物経済も直撃弾を受ける恐れが強くあり、不安を加重させている。「姜万洙・企画財政部長官が市中銀行を集めた席で海外資産売却を促した。長官の発言が市場に伝わった後の現象は為替安定ではなく、不安増幅だった」と政府の未熟な対応を批判する言論もある。